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「鈴理先輩、おはようございます」



学生にとって週の始めとなる気だるい月曜日。


壮絶な眠気と戦いつつ、いつもどおり徒歩三十分以上掛けて登校してきた俺は、今まさに昇降口に入ろうとしている鈴理先輩を見つけて駆け足。


彼女の名前を呼びながら手を振って挨拶をする。


立ち止まって振り返ってくる鈴理先輩は、俺の声を聞くや姿を見るや否や「空!」大声で俺の名前を呼んでBダッシュ。


猪突猛進に突っ込んできた。

うん、駆け寄って来たじゃないよ、突っ込んで来たんだ。


本能的に急ブレーキを掛ける俺に対し、先輩は小柄な体躯もなんのその。

ガバッと飛びついたと思ったら、俺の体を引き倒して、背中に手を回してきた。


俺の目の前には高く青い空と先輩の顔。

図体のでっかい阿呆後輩がビューティー先輩に支えられているという、なんと目に毒な光景。


これは朝っぱらから辛い。


「ちょ、朝からそんなに、なんで情熱的なんっすかっ」


ここはスペインっすか? 情熱大陸っすか?

どーでもいいけどっ、周囲の目を気にして下さい!

今更な台詞だけど、気にして下さい先輩!


なーんてヒロイン(?)の訴えを物の見事に退けてくれる、麗しき俺のヒーロー(?)は「遠慮するな」とキラキラキラキラエンドレス、いつまでも輝いた目で俺を見つめてのたまう。


「一昨日、そして昨日とあんたに会いに行けなかったからな。寂しい思いをさせただろう? ったく、会いたいなど愛い言葉を。で、それはセックスの誘いと受け取っても?」


「会いたいイコールお誘いなんて言語道断っす! “会いたい”にそんな意味合いがあるなんて、俺、ぜぇえったい認めませんっすよぉおお!」

「またまた照れる。誘ったのが恥ずかしかったのか?」


相変わらず先輩のお耳は幸せっすね、俺は全力投球で否定しているのに肯定に変換とか!


ああくそっ。

俺はマジで先輩のこと好いているみたいで、顔が熱くっ、ああああっ、朝からなんったる羞恥心!


ついでに先輩、そろそろこの格好から脱したい。

かんなり注目を浴びている。


恥ずかしいのなんのってこの場から消えたいの嫌がらせだ!