「ちょっとでも気を緩ませたら成績が落ちるからね」
「空くらい勉強熱心だったら、父さんも今頃ハーバード大学に入れてたかもな」
またそうやって息子を茶化す。
拗ねる俺に、「本当さ」空はそれだけの力を持っていると褒めてくれた。
嬉しくないといえば、それは嘘になる。
だって両親に褒められたんだ。やっぱ嬉しいじゃん。
実の子じゃない息子をこうやって褒めてくれるんだ。
尚更嬉しいよ。此処にいてもいい気がするから。
これからまた暫く勉強に浸っていると、母さんに風呂に入るよう促された。
返事をする俺は勉強道具を片付けて早足で風呂場に向かう。
今日一日の汗を流してリラックス。
極楽極楽を満喫した後、風呂から上がって寝る支度へ。
部屋が狭いから敷布団を寝室と居間の双方に跨って敷かないといけない。
テーブル台を片付けて俺は母さんと三人分の敷布団を敷くことに専念。
「あら、これ」
と、母さんの声。
振り返ってどうしたのかと訊ねれば、俺の制服付近で屈んでいた母さんはクモを見つけたみたいと苦笑いを零した。
そりゃあ古く狭い家だもんな。イエグモくらいしょっちゅう出るって。
クシャリ。
向こうから聞こえる紙音に気付かなかった俺は、布団を敷いてしまうと机上に置いていた携帯を手に取って、窓辺付近に座った。
あくまで付近。窓辺には絶対に近寄れなかったから、付近の壁に腰を下ろして後ろに凭れ掛かる。
イチゴくんから早速メールが来ていたから返信。
その後は着信履歴を呼び出してボタンに指を掛ける。
時間は22時50分か。
躊躇うけど、まだ起きてるかもしれない。
非常識な時間帯だけど、ちょっとだけ、ちょっとだけ。



