前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



「無いのか。なんだよツマンネ」


指を鳴らすイチゴくん。

じゃあ空から見てどんな彼女だという問い掛けに、俺は三点リーダーをたっぷりと出す。


どんな彼女って、多分アジくんから聞いているとおりの彼女図なんだけど。


周囲の女性達からは頼れる姐さんで通っていて、でも男の自尊心が傷付けられるほどの雄々しい行動派。


あたし様をいかんなき発揮する肉食獣。

俺の(一応)ヒーロー、みたいな?


おかげさまで時々俺はモロッコで性転換しないといけないんじゃないか? と思うことがあったりなかったり。


ほら、目を閉じれば思い出す。

お姫様抱っこに逆セクハラ、エスコートをしようとする先輩もいれば、公開ちゅーをする先輩もいたり。

公共の場で堂々とセックス発言する先輩もいれば、アアッ、放送禁止用語を多々発する先輩も。


「ッ~~~そういや、女装させようとしたこともあったなっ。もうちょっと女の子らしくなってもいいと思うんっすけど。攻め女でいいっすから、もう少し行動を控えてくれても」


頭を抱えて悶絶する俺はその場でしゃがんだ。

見かねたイチゴくんが、ポンッと俺の肩に手を置いて「苦労しているんだな」同情してくれる。


同情するなら金をくれ、じゃない、同情するなら攻め女に一度攻められてみろ!


先輩は駄目だけど、日本全土を探せばひとりくらい先輩と似た趣向の持ち主と遭遇する筈だ。



突如、ブレザーに入れていた携帯が声を上げる。

どうやら電話のようだ。忙しく音を奏でて早く出ろと急かしてくる。

俺はイチゴくんに「ちょっとごめん」と断りを入れて、ディスプレイを確認。


表記されていた名前は竹之内鈴理。

うそん、先輩、習い事中じゃないんっすか? なんで電話が。

俺はボタンを押して電話に出る。


同時に『遅いぞ!』大喝破してくる先輩の捲くし立てが俺の鼓膜を貫いた。

こ……声でけぇっす。先輩。


『まったく何をしているのだ、空。あたしが電話を掛けたらワンコール以内に出ろ。所有物としての自覚がないんじゃないか? こうしてあたしが電話を掛けているんだ。迅速に電話に出ろ! 命令だぞ!』



また突拍子もなくあたし様を発揮して。