前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



イチゴくんに引き摺られて来た場所は、徒歩15分にあるちょいと寂れた大通り。

活気付いているわけじゃない。でも寂れ切っているわけでもない。

中途半端な大通りだ。色に例えるとそうだな、セピア、かな。


俺の元住んでいた町はほんと中途半端って言葉が似合う。


ちょいちょいシャッターが下ろされている店を目にしながら、俺はイチゴくんに引き摺られるままCDショップへと足を踏み込んだ。


俺はてんで音楽に疎いんだけど、テレビっ子のおかげでアーティストくらいは知っているし流行っている歌もなんとなく分かる。


イチゴくんは今売れているアーティストのCDを数枚、洋楽を数枚、んでもってまだ無名であろうアーティストのCDを数枚手に取っていた。


CDを何枚も買うなんて贅沢買いだな、と思う俺だけど、イチゴくんは大半をCDに費やしているらしい。生粋の音楽スキーさんなんだ。


「一度でいいからバンドとか組んでみたいんだ」


イチゴくんはあどけない笑みを俺に向けて夢を語ってくれた。

別に歌で食べたいってわけじゃなくて、趣味として音楽に携わっていきたいとか。

人生の片隅で音楽と関わっていきたい。そのためにギターを練習中らしい。


凄いな、そういう夢があるって。

なんだか立派な夢のあるイチゴくんに憧れた。


だって俺、夢というより目標ばっかり立てているから。


エレガンス学院に入るのも夢というより目標だったし。


高所恐怖症を治すのも、これまた目標にしか過ぎなくて。


うーん、なんか俺の人生超侘しいぞ。俺もいつか夢、見つけたいな。


夢を踏まえて目標を立ててみたい。


「そういや空さ。彼女の写真とかないのか? 俺、見てみたいんだけど」


ずらーっと並んだCDを眺めていると、イチゴくんから奇襲攻撃。どっかーん発言をされた。

「え?」戸惑う俺に、「プリクラとかないの?」にやっとイチゴくん。


「超美人さんなんだろ? 見てみたいんだけど」


俺はアタフタと首を横に振る。

彼女の写真なんてない。

……嘘、あるけどあれは俺がキスされているやつだ。

先輩がLINE越しに画像を送りつけてきたんだよな。

あれを見せるということは、俺の情けない姿を見せてしまうということ。イチゴくんには死んでも見せられない。