話は戻し、大雅先輩は俺に高所恐怖症の話題を振ってくる。
「真面目に話をするがお前、高所恐怖症が酷くなったって……単なるメンタル面の話か? 情緒不安定なら今までだってあっただろ?」
「そうなんっすよね。でもほんっと、階段の高さが怖くなっちゃって。上れるけど、下りる時が……あ、下りられないってことはないんですよ。ゆっくり手摺を掴んで、下を見ないよう努力すればなんとかなります」
「そうは言ってもこの学院は五階建てだぞ? 階段の上り下りは多々あるだろうが」
「不味い……っすよね。どうしよう」
肩を落とす俺に、
「焦ってもしゃーないよな。じゃあ、ちょい時間を置いてみたらどうだ?」
大雅先輩が助言してくれる。
もしかしたら時間が解決してくれるかもしれないと大雅先輩はフォローしてきてくれる。
同じように鈴理先輩も「時間が経てば元に戻るさ」と笑みを向けてきてくれた。
それもそうだよな。
焦ってもしょうがないし、時間が解決してくれるかもしれない。
長年高所恐怖症と連れ添ってきたんだ。
簡単に克服することなんて無理だろう。
二人の助言を素直に聞きいれて、時間が解決することを待つことにした。
大丈夫、きっと時間が解決してくれる。
長い目で見て取り敢えず、1ヶ月様子見してみよう。
「あ、そうだ。どーしても階段が下りられなかったら、鈴理に頼めばいいじゃねえか?」
「え?」
間の抜けた声を出す俺に、ニンマリと大雅先輩。
「姫様抱っこで一緒に下りてもらえよ。学校の名物になんじゃね?」
カラン。
箸を滑り落とす俺の向かい側で、「それは名案だ!」鈴理先輩は目を爛々とさせて手を打った。
高所が恐怖というのならば、高所に良き思い出を作ればいい、彼女は指を鳴らして俺に言う。
「早速この後してやるからな。安心しろよ」
い、嫌だ。絶対に嫌だ
良い思い出どころか、別の意味でトラウマになっちまうから!
身震いする俺に大雅先輩は大爆笑、鈴理先輩はしたり顔を作って虎視眈々と獲物を見つめてきた。
畜生、大雅先輩の余計なヒトコトで俺、この後全力で逃げないといけねぇじゃんかよっ、ド阿呆! 大雅先輩のドアホーウだ!



