今は二人の、いや先輩と姉妹の間に溝があるけれど。
正しくは先輩が自己防衛のために姉妹達と溝を作っているけれど。
「空、何をしている? 置いて行くぞ。それとも、もう一泊していくか?」
名前を呼ばれて俺は先を歩く先輩に「待って下さいよ」、夕風と共に駆け出す。
きっといつか、鈴理先輩は自分で作った溝を取っ払って姉妹達と歩む日を掴む。
自分でその日を掴むんだって、俺は信じている。
だって彼女は受け男が認めた攻め女なんだ。
先輩はその場で足踏みばかりする人じゃない。
臆病風なんて振り切って、ガンガン攻め込むに決まっている。
俺の彼女はそういう人なんだ。
何年掛かったとしても、先輩はいつか、前進する契機を掴む筈だ。
でも、もし先輩がその契機をいつまでも掴めないというのなら、
「先輩。今度は俺の家にも泊まりに来て下さいね。部屋狭いし、大したもてなしもできないっすけど」
「いいのか。絶対に行くぞ。お前のご両親とも沢山お話したいと思っているんだ」
その時は受け男も全力で手を貸そう。
自分の問題は自分で解決するものだけど、契機を掴む手助けくらいなら、したって全然許されるに違いない。
だって人間は一人で生きているんじゃないんだ。
誰かに支えられて今日を生きている。
だったら、
「なあ、空。昨日の約束、絶対に果たそうな。冬が楽しみだ」
「はい。約束っすよ」
俺はこの人を支えたい。
そう思うようになったのは、先輩、貴方のせいっす。
貴方の一途な好意が、いつの間にか俺の世界を先輩中心にさせた。
ああ、そうか、俺、もしかしてもう落ちているんじゃないだろうか。鈴理先輩に――。



