パチッ。
電気を落とした後、ベッドに戻って俺の分の枕と毛布を手に伸ばした。
やっぱ一緒には寝れないよな。若かりし男女が一つのベッドに寝ちまうなんて。
健全な関係を保つためにも、今日のところはソファーを借りよう。
と、先輩の手が伸びて俺の寝巻きを掴んできた。
「お?」
瞠目する俺はゆっくりと先輩に視線を向ける。
そこには不機嫌そうに重たい瞼を持ち上げている先輩の姿。
引き込むような力で寝巻きを引っ張ってくるもんだから、俺は苦笑。
観念することにした。
セックスは免れたんだ。
これくらいの我が儘は聞いてあげないとな。
「失礼します」
一声掛けて、俺は布団の中に体を入れた。
瞬く間に先輩が擦り寄って来る。
まるで抱き枕を抱くように俺の体に手足を巻きつけて、ホッと安堵の息を漏らした。
超距離が近い……と思う俺だけど、「あったかい」彼女の吐露で思考を止めた。
うつらうつらと夢路を歩きつつ、先輩は唇を動かして語り部に立つ。
俺はといえば、ジッと先輩の独白に耳を傾けていた。
「家の中はいつも肌寒く思える。特に寝る時間は……寒いんだ。心寒い」
「寒いんっすか?」
「ん、寒い。毎日寒い。四季に関わらず寒いんだ」
そっか。寂しいんっすね、先輩。
大雅先輩は言っていたな。人間は独りになると、愛情を求めちまうって。
大好きなお前にガオーッすることで、孤独を霧散しようとしてるのかもしれない。
同時にお前の心が欲しいんだろうな、と。
先輩は毎日、凄く寂しいんだ。あっためて欲しいんだ。この環境に、家族関係に、すべてに。
学校ではそんな念を抱く事がないから、そういった一面は爪先も見せないけど、先輩は俺の思っている以上に孤独を抱いている。
家族の前ではあんな能面なんだ。
姉妹とさり気なく会話に加担すればいいのに、それさえできず、自分の価値観で悶々と空気になっているんだ。
俺が思っている以上に鈴理先輩は孤独を抱いている。人肌を欲しているのは、きっとそのせい。
暗闇の中、彼女を恍惚に見つめた後、俺はそっと腕を伸ばして抱き締めてくれる先輩の頭を撫でた。
「先輩はひとりじゃないっすよ、ダイジョーブっす」



