「フッ、空。怖いのはあんただけじゃないさ。あたしだって怖い。好きな奴に触れることはあたしだって怖いさ。
けどな、空。恐れ以上にあんたが欲しいと思うんだ。
なんでだと思う? 理由は簡単明白。
あんたが好きだからさ。言っただろ? あたしはあんたの最初の女になりたいと同時に、最後の女になりたいとな。
そうすれば、空はずっとあたしの傍にいてくれるような気がしてな。いてくれるような気? いや違うな。
正真正銘あたしの所有物になると分かっているからこそ、あんたを求めるんだ。なんたって、あんたはあたしが狙った獲物。
つべこべ言わずにあたしに流されればいいんだ。
そうすれば恐怖以上の世界、見せてやるさ。そう、あたしで一杯の世界をな。何も考えず、あんたはあたしのことだけ」
「見て」先輩の指が、「聞いて」ゆったりとした動きで、「感じていればいい」俺の唇に人差し指を押し当ててきた。
「余計な心配するな。責はあたしが取るし、恐怖でなく楽園を見せてやる。だからあんたは身を委ねて、あたしの男になればいい」
この時、俺、豊福空は思った。
嗚呼、俺様系小説が好きな麗しき全国の女性様方。
こういう身勝手極まりない、我が道まっしぐら台詞にときめくのですか? と。
ときめく方がいらしたら、俺の前に連れて来て欲しい。
ときめきポイントを是非教えて頂きたいんだぜ!
そして思う。
嗚呼、先輩はやっぱり一筋縄でいく相手じゃないなあ、と。
ガンガンいこうぜモードを解除するための演技が、まさかこうしてヒートアップするなんて。
なんてこったい、先輩の思考回路が全然読めない。
ついでに悶えポイントも読めない。
大体エッチ怖いよぉお! と、恐れおののいているイタイケボーイを、ガンガン攻めようなんて。
どういう人情を持っているんっすか先輩!
色んな意味で俺は泣きたくなってきましたよ。
あたし様思考は分析不可能だ!
そしてこの雰囲気、先輩の言葉を借りるなら、いつものパターンっす! 自分の解釈で事を進めないで下さい!



