前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



内心で十字を切りつつ、俺は「やっぱり駄目っす」怖くてできないと先輩に直談判。先輩の肩に両手を置いて、軽く押し退けた。


「空?」


「あの、その、キスはできてもセックスは……怖いんです。気になる人なら特にそうです。傷付けてしまいそうで。俺は先輩の心には触れたいと言いました。でも体にはまだ……意気地なしかもしれないけど、怖くて、だからその……すみません」


俺、おれ、怖いんです。先輩とエッチなんてできないよ。エーン。エーン。じわっと涙目でうるうる……になれていないのが残念な演技力。


だって仕方が無いだろ。

咄嗟に涙目になるとか巧みな技術はもっていないんだから。


涙を武器にするのは女の子だろ!

男はちっちゃなことで泣くなって昔から言われているだろ!


その代わり、項垂れて無理だと連呼。

何度も怖いんだと小声で訴える。


なんかもう究極に死にたいけど、健全な未来を守るためだ。

自尊心なんて捨てようじゃないか! ははっ、笑いたきゃ笑え! おおいに笑ってくれ!


それに……これは本心でもあるんだ。


読んだこともないケータイ小説で描かれている男のように女を簡単にガオーッなんて、俺にはできないし、第一女に触れるって行為が恐れ多い。

耳にタコができるほど保健の授業で性教育を受けてきたんだ。

安易にできるわけないだろ。


怖い、性欲の意味を持って人に触れるのは怖いよ。好奇心でできることじゃない。


そう思うのは果たして俺だけなんだろうか? 他の男はフツーにできているのだろうか? 謎い、謎いよ。


情けない俺の訴えを聞いた先輩はダンマリになる。


もすかすて呆れちまったかなー?

ちょいと不安になって恐る恐る顔を上げれば、「ッ~~~!」盛大に身悶えている残念な美人さん此処にあり。

これはキタ、とばかりに両手で拳を作って目を爛々輝かせていた。


これこそ自分の求めていた攻め女と受け男のストーリー展開だと感動に浸った後、先輩は俺にキスする勢いでグッと顔を近付けてくる。


「そんな可愛い目で訴えられると、尚更襲いたくなるではないか。空も罪な男だな」

「え゛? お、俺、怖いって!」


コワイの意味分かります? 良い感情じゃアーリマセンよ! な、なんで焚き付いてるのこの人。