「では早速」
イタダキマスと両手を合わせて、寝巻きに手を掛けてくる先輩に、
「ま、待って下さい!」
タンマを掛ける俺はどうにか上体を起こして、ブンブンブンブン首を横に振った。
さっきまで抜けていた力を復活させ、どうにかこうにか先輩の体を押し退けようとする。
が、しかーし。
忘れてはならない。
先輩は合気道を習っているお嬢様だということを。
他にどんな護身術を習っているかは知らないけど、俺よりかは強いってことを忘れちゃいけない。
つまりなにが言いたいかって言うと、抵抗すればするほど向こうも力をいかんなく発揮してくるってことだ!
「そーら、さっきまで乗り気だったろ?」
ニコッと笑って心を見抜いてくる先輩に、俺はうぐっと言葉を詰まらせながら、グルグルと急ピッチに思考を回した。
なんて言い訳しようか。
キスのせいで愚かなことを思ってしまったんです?
先輩が攻めてくるから戸惑っちゃって?
ちょいとサタンに囁かれて魂を売ろうとしました?
どれも妥当な台詞だけど、なんかしっくりこない。
じゃあ、あれだあれっ!
「せ、先輩がセックスに……道具を使うって言うから。その俺、怖くなって」
俺は阿呆か。
この言い方だと齟齬(そご)が出てくる。
一応道具を含めたセックスが怖いと伝えたつもりだけど、今の言い方だと。
「ああ。悪かったな、空。一番最初から道具を使うのは邪道だった。じゃあ普通にするか」
ほっらぁああこうなっちまうじゃねえかよ、先輩乗り気満々じゃんか!
ああああっ、どうする、どうするよ!
あれか、エビくんが言っていた泣き落とし? 怖いから無理っすとでも言うか?
だけどこれは究極にダサくないか。
男が女にエッチ怖いんで無理ですうぇええん……マジドン引き光景! 某少女漫画でよく見る展開だといえば確かにそうだ。
女の子が無理だと泣き出す光景は胸きゅん、であるが、であるが、俺は遺憾なことに男でありポジション的に泣き出す立場。
想像するだけで目に毒過ぎる。
嗚呼。
男のプライドを取るか、俺達の明日の未来を取るか、さあどうするよ。豊福空……考えるまでもないか。ああもう、なんでこうなるんだよ。
くそ、乙女系ちげぇ乙男系純情派を演じりゃいいんだろ! やってやらぁ!



