くうっ、喉の奥を鳴らす俺は限界を超えていた。
のぼせたように頭がくらくらする。またのぼせたかも、先輩のキスで。
ふっと唇が離れていく。
ひゅっと喉を鳴らして呼吸を始める俺の口端を舐め上げて、自分の口端も舐めて、人の首に噛み付いてきた。
「イッ」
痛みで声を上げる。
素知らぬ顔で視線を合わせてくる先輩は肉食獣のようにやらしく笑みを浮かべてきた。
「残念だが空。あんたが努力と勇気で攻めたとしても、こうして倍返しがくるだけだぞ」
息をつく俺はうつらうつら相手を見つめる。
やっべ、逃げないといけないのに、体がちっとも……先輩の本気モード、舐めていたかも。
今までの攻めなんて戯れの戯れ。先輩の本気ってめっちゃ強引で、荒々しく、どことなく余裕のない態度を取るんだ。
ははっ、ほんと肉食獣みたいだな、ほんと。
「空。やっぱりあんたはこうして攻められている方が可愛い」
容赦なく首筋を噛み付かれる。痛みで声を出す俺がいた。
首筋から鎖骨を何度も吸われる。息を呑む俺がいた。
至近距離で瞳を見つめられる。見つめ返す俺がいた。
なにも抵抗ができないのは、向こうの相手の力が強いのか、それとも俺の力が抜け切っているからか。
さらっとした髪が俺の首筋を擽る。
むず痒い感覚に堪えながら、「せんぱい」俺は力なく相手の名を呼んだ。
「空はあったかいな」
先輩は身を丸めて肩口に顔を埋めてきた。チクチクしたむず痒さが増す。
「こうしていると空の脈が分かるな」
俺にも伝わってくる。先輩の体温が。
ついでといっちゃなんだけど先輩、俺の肩口をじかに舐めてくれちゃっている。
舌の感触が体をぞわぞわとさせるんだけど。
すとんと背中が滑り、体が床に崩れる。
力なく見上げると、鈴理先輩が妖艶に微笑して覗き込んできた。
赤みを帯びた唇が艶かしい。
あれと重ねていたと思うだけで胸が熱くなる。
もっと欲しい、本能的に思った。
「先輩、キス」
「空。教えたよな?」
あ、おねだり、教えてもらったっけ。
「キスちょうだい」
言葉を紡ぐと、「いいよ」空の満足するだけあげる。
ゆっくりと顎を掬い取られ、そのまま唇が重なった。
舌の侵入を容易に許す俺は、おずおずと己の舌を差し出す。
根っこから先端にかけて絡む舌が熱帯びていた。
息継ぎの合間に唾液を嚥下するとエロイ、と笑われてしまう。
その言葉にすら反応する俺がいた。
ただただ思う。
もういいかもしれない、と。
先輩に任せて、後は野となれ山となれ。あれよあれよと夜を明かすのも良いかも、と。
だってもう逃げられないんだ。
先輩のぬくもりからも、キスからも、欲情からも。どっちが抱くとか、リード権を持つとか、そんなのどうでもいい。
俺は欲しい。この人が欲しいんだ。
交わすキスが、とても気持ち良い。



