「あたしが半分ずつに分け合いたかっただけだ」
「なんだか悪いっすよ。俺の弁当と先輩のランチセットを均等に半分にしてもらっちゃって……どう考えても先輩が損しています。気遣わせてしまいましたね」
「すみません」謝る俺に鈴理先輩は何を言っているんだとまた一笑。
「あたしがしたいことを勝手にしただけだ。好きな奴とこうやって分け合って食べる。それは普段の二倍食事が美味くなる。
これは同情ではなく、あたしのしたいことをしたまでだ。意外といけるぞ。このもやし炒め。あまり、もやしというものに接触する機会が無いからな、とても新鮮だ」
「鈴理先輩……」
「あたしが二倍美味しいと思うように、あんたも普段の二倍食事が美味しいと思ってくれたら嬉しい」
鈴理先輩の微笑と想いの込められた言葉に顔が熱くなる。
いつも不謹慎な言葉を向けられているせいか、こういった優しさには慣れていない。
全力で戸惑う自分がいる。
これが先輩の素だとしたら卑怯だよな。
こんな優しい美人さん女性に落ちない男はまずいないと思うぞ。
「頂きます」
箸を取りケチャップライスが顔を出しているオムライスを、米粒を落とさないよう器用に掬う。
巻いてある玉子と熱を持ったケチャップライスの程よい塩梅が堪らない。
自然と頬を崩してしまう。
「美味いか?」
顔色を窺うように聞かれたので俺は大きく頷いて感謝を態度で示した。
いつもよりも昼飯が美味く感じる。
勿論、それは目前の料理がお値段相応に美味いことも理由に挙げられる。
けれど、それ以上に先輩の気持ちが伝わったからだろう。
「美味しいです」
態度では足らず、言葉と笑顔で返した。
俺の返答に鈴理先輩は目を細めて笑った。
「そうか。空が美味いと思ったなら嬉しい。沢山食え」
なんでそんなに男前、いや女前なんっすか。
不覚にも胸キュンする俺がいる。先輩にドキドキしている俺がいる。
だっていつも攻め攻めな先輩しか見てないからさ。
こんな人にキスされていると思うと、顔も火照るよな。マジで火照っちまうよな。



