前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



先に歯を磨かせてもらおうと、洗面所を借りた俺はシャコシャコと歯ブラシで歯は勿論、歯茎まで隅々磨いていく。


眠くなってきたな。

俺の家、わりと寝るのは早いんだ。


昼間はなんちゃって執事として働かされたしな。


ハードだったよなぁ、特に肥料運び。

重たいのなんのって腰にきたよ。


がらがらっ、ぺ。

うがいをして口を濯ぐと、洗面セットを仕舞って欠伸を噛み締めながら先輩の部屋に戻る。


入れ替わりで先輩が歯磨きをしに自室を出たから、その間、俺は寝る場所でも整えようかね。そう寝る場所。


えーっと、寝る場所ってソファーでいいのかな?


いやでも、向こうのベッドに枕が二つあるし。

あそこで寝なしゃんせ、とベッドが手招きしてるということは、俺は先輩と……ん? ……あれ? ……ナニ、俺、まったりしてるんだよっ!


「しまった。ほのぼの映画を観てしまったせいか、すっかり気分がリラックスしてしまッ、ど、どするよっ! これから寝るんだぞ! サバイバルが始まっちまうんだぞ! 能天気に眠いとか思ってる場合じゃないんだぞ!
あ、でも先輩だって今日は習い事で疲れているかもだしな。何事もなかったかのように寝ちまえば、そう、お互い、寝ちまえばこっちのものっ」


だけど念には念を置いて、今日はソファーで寝ようかな。


うん、そうしよう。

大体若かりし男女(学生)がひとつのベッドで寝ようというのがおかしいんだよ。


え? 考え方が古風? いいんだよ。

頑固頭だと言われようとなんと言われようと、俺はソファーで寝る!


決まれば即行動あるのみ。

俺は洗面セットを鞄に仕舞うと、ベッドに向かって颯爽と枕を手に取った。


うっし、毛布も拝借したし、準備万端。


ソファーはちょい狭そうだけど、寝れないってわけじゃ「そーら」


ビクッ、俺は持っていた枕と毛布を手から滑り落とす。

ぎこちなく振り返れば、「うわぁあ!」真後ろに先輩がいた。いつの間に?!


「それを持って何処にいこうとしているのだ? あんたの寝場所は此処だぞ」
 

つんつんと空いたベッドを指差す先輩の目、ちっとも笑っていない。


逃げようとしてるわけじゃないだろうな? あーん? と、脅されている気分である。まる。