前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



「そういえば先輩の部屋ってテレビとかないんっすか? もしかしてテレビを観ようとする度に移動するんですか?」


取り敢えず苦し紛れに出した話題だけど、先輩は反応してくれた。


「テレビ? ああ、この部屋にもあるぞ。空、そこのテーブルにリモコンがあるだろ」


と、言われ、俺はテーブルに目を向ける。


確かにリモコンらしきものが幾つか……「それの右端がテレビだ」赤いスイッチを押せと指示されたからぽちっとな。


すると天井からでっかい液晶テレビが降りてきた。


す、すっげぇ、なにこのハイテク!

テレビが天井から降りてくるとかっ、マジスゲー!


「おおっ」


感嘆する俺は、ぽちっとボタンを押す。

電源の入ったテレビからは、お兄さんニュースキャスターがいたく真顔になってお茶の間に報道を伝えている。

今の時間は、あ、十時過ぎか。


じゃあまだ何かあってるだろ。

今日は土曜日だから洋画劇場もあるだろうし、なんか面白いバラエティ番組だってある筈。結構テレビっ子な俺は、ボタンを操作してバラエティ番組にかえた。


おっと、今話題の芸人達がゲーム対戦をしているようだ。

体を張って作られたステージのアトラクションに突撃している。

こんな大画面でテレビを観られるなんてさすがはお嬢様。

映画とか観たら迫力あるんだろうな。


ちょい洋画にしてみてもいいかな?


「空はテレビをよく観る方なのか?」


髪を乾かした先輩が戻って来る。

隣に腰掛ける彼女に俺は小さく頷いて肯定してみせた。


「結構なんでも観るんですよ。家にはゲームがないから、暇になったら読書、勉強、もしくはテレビって決まっているんっす。ドラマも観ますし、映画や野球、ああ、将棋や囲碁も観ますよ」


「それはまた渋いな」

「意外と観てたら楽しいんですって。先輩はやっぱり恋愛ドラマとか映画が主ですか?」

「そんなことはないぞ。お笑いも観る。わりと芸人は好きなんだ」


実際お笑いライブにもいったことがある、愉快そうに語る先輩だけど……似合わないな。お嬢様がお笑いライブを観に行くなんて。


先輩がそこのライブにいるだけで異色を放ちそう。

場違いが此処にいるよ、マジかよ、別嬪此処にいてもいいのかよ、なーんて芸人さん以上に注目されそうだ。


注目を浴びないよう変装でもしてたり? ありえそうだな。