「先輩っ、こっち来ないで下さい! ま、マジ勘弁っすからっ!」
「まったく。空は初心(ウブ)過ぎるぞ。お互いタオルで隠しているのだから安心しろ。混浴じゃ普通だろ?」
此処は男女湯で分かれていたじゃアーリマセンカ!
「絶対駄目っす! 来たら怒ります!」
喚く俺に、「ったくもう。照れ過ぎだぞ」先輩は呆れ返ってくれた。清々しく呆れ返ってくれた。
先輩には分からないんだ。この男心。
どんなに草食系男子でも女性の裸に興味がないと思ったらなっ、思ったらな……この場から消えたい。
浴槽の縁でガンガンと頭を打ちつけて身悶えている俺に何を思ったのか、先輩の一笑する声。
ざぶざぶざぶと水しぶきを上げたと思ったら、俺の気持ちなんてお構いナシに背中を指でなぞってきた。
「うわぁあっ!」
悲鳴を上げる俺は、猛スピードで逃げようとするんだけど、ガッチリ腕を掴まれて逃げ場を失う。
イジメだ、これは一種のイジメだっ!
女経験もない男をイジメても何もでないっすよ! マジっすよ! 畜生っすよ! どうせ俺は貧乏学生っすっ、顔立ちだって普通っす!
いたいけな純情少年をイジメて楽しいっすか?! だったらドドドドドSっす!
大パニックになる俺に、落ち着けと先輩はクスクス笑ってくる。
「大丈夫だ。タオルを巻いているのだから。そうだな、これは水泳の一種とでも考えようか。そうすれば、お互い気兼ねなく話せる。タオルは水着だ。あたし達はまだ裸じゃないぞ」
「そ、そりゃそうっすけど」
「どっちにしろ冬には温泉に行くんだ。慣れないと駄目だぞ。変に意識するとあたしも恥ずかしくなる。ほらこっち向け。普通に話をしよう」
だったら部屋でもお話できるじゃないっすか。
心中で涙を呑む俺だけど、先輩が一向に腕を解放してくれないから、観念しておずおず先輩と肩を並べることにした。
まだ目が別の方向を見てしまうのはしゃーないよな!
静かになる俺に、「可愛いな」余裕綽々な先輩は頬を突っついてくる。
「やめて下さい」
ぎこちなく返事をする俺は変に緊張していた。



