前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



勉強するの手はもう使えないぞ。

あらかた勉強終わっちまったもん。


後は「ガラッ―」

んー、そうだな……談笑するしかないだろうけど。話題がな。


ぼーっと湯につかっていると、「良い湯か?」隣から声を掛けられる。


「あ、はい」


俺はお邪魔していますと慌てて返事をする。

やっべ、お父さんが入ってきたみたいだ。

「良い湯ですよ」

笑みを刹那、俺は目を点にした。


「まったく、空があまりにも遅いから捜しに行ったではないか。何処行っていたんだ?」
 

ふーっと湯船に使っているのはバスタオルに包まった先輩。

おや、おかしい。俺は女湯を選んでしまったのだろうか。


いや違う。

俺はちゃんと男湯と描かれたのれんを目にして此処に入った。


ということは先輩が此処にいることがおかしい。そうおかしいのである。


カチンと固まる俺に、「迷子にでもなっていたのか?」先輩が早く来いと物申してお小言。


冷静な俺なら「すんませんっす」と返すところだけど、遺憾な事に今の俺は冷静じゃなかった。

彼女を凝視、次いでついつい男なら見てしまう胸を流し目にした後、


「うわぁああああせんぱぁああいなにしてわああぁああ!」


大絶叫を上げた。

慌てて浴槽の隅っこに避難する俺は、彼女に背を向けてバックバクと高鳴る心臓を必死に押さえ込む。


「な、なにしているんっすか! こ、此処は男湯っすよ!」


ああああっ、くそっ、ガン見しちゃったじゃないかっ、先輩のむ、む、む……俺なんて灰になればいいんだコノヤロウ。


畜生、俺のお馬鹿。


ちょっとときめいた俺、もっとお馬鹿。

谷間がすげぇとか思った俺、爆死しちまえ。


「安心しろ。此処を使うのは父のみ。あたしが入っても驚くのは父だけだ」

「お、おぉお俺も十分おどっ、おどろっ…………風呂場襲撃まで予測していなかったっす」


「油断大敵だな。空」


ええまったくもってそうっすね! 

攻め女の行動範囲を熟知してなかった俺が悪かったっす!


で、でもこれはあんまりっすっ!


お互いに、は、裸を見たトラブルが発生した場合、十中八九男に非がくるんっすよ、先輩! 


水音が聞こえ、ゲッ、こっちっ、来ていますね、先輩こっちに来ていますね!