その内、暇さえあれば母さんが隣に座ってくれたっけ。
父さんが隣に座ってくれていた時もあった。
俺の気の済むまで、両親は俺に付き合ってくれたんだ。話し相手にもなってくれた。
本当は分かっていたんだ。
幼い俺でも父さん、母さんはもういないんだって。
向こうの訴えてくる目が何度も何度も強く教えてくれたから。
けど、受け入れられずに時間だけ過ぎていった。
じゃあ受け入れられた契機はなんだったのか。
注がれた愛情が積み重なって、結果的に雪崩れを起こしたから、だったと思う。
明確な理由は無いんだけど、いつものように実親を待っていたある日のこと、一緒に待ってくれていた母さんが「おやつでも食べましょうか」と誘ってきてくれて。
いつもいつも動きたくないと愚図る俺だから、此処に持ってくるから待っててねと言って一旦移動。
ちょっと時間が経った後、お皿を持って戻って来た。
俺を喜ばせようとウサギりんごにしてくれた、そのりんごを見て、なんだかもう、今まで張っていた糸が切れてしまったんだ。
きっと俺自身、限界だったんだと思う。待つことに。
ワンワン泣きじゃっくて母さんの胸に飛び込んだ。
お父さんお母さんはもういないんだよね、迎えに来ないんだよね、死んじゃったんだよね。
確かめるように聞いて、それまで拒んでいた母さんの優しさに甘えて甘えてあまえて、俺は今の両親を受け入れた。
受け入れる、そりゃもう、相当の勇気だったよ。
自分の親を失ったって事実を受け入れなきゃいけないんだ。
あの頃の俺にはすっげぇ勇気のいることだった。
あの頃の俺と、先輩達ってある意味、似ているし、共通点がある。
「真衣さんや先輩の気持ちすっごく分かります。だって俺も昔の面影に縋っていた時代があったっすから。似たような経験しているんで、応援したくなる。大丈夫、遅くはないと思いますよ。時間は掛かると思うっすけど、でも、できないことじゃないっす。要はハートっすから」
経験者が意気揚々と語れば、呆気に取られていた真衣さんがクスクスと笑って下さった。
そんなに俺が言うと似合わなかったか? 今の台詞。
いやでも経験者が言うんだから間違いない……マジだぞ? ほんとだぞ?
ちょい困惑していると、真衣さんが「ごめんなさい」柔和に綻んだ。



