そ、そんなこと言われても、ああ、一切れが大きいんだけど、も、勿体無い気もするんだけどっ!
ただこのままだと先輩に気遣わせるから、遠慮なくイタダキマス。
フォークでムニエルを刺して口に運ぶ俺は、「なんだかスッゲェ贅沢っす」微苦笑を零した。
「気持ちは板チョコを升目も気にせず一気食いしている気分ですね。贅沢食いっす。あ、すっごく嬉しいですよ。遠慮せず頂きますんで!」
「……空、なんだ。その板チョコの升目というのは」
「あれ? 先輩には言ってませんでしたっけ? 俺、升目に添って一日一枚ずつ割って十日ほど持たせるんっす。なんかその場で全部食っちまったら、勿体無い気がして。今度はいつチョコが食えるかと思うと……だから小さく小さく割って日を持たせようとするんです。十日も持つと、その間のおやつはいらないですしね!」
「そうか、そうだな。十日も持てば、その間のおやつはいらないな。空は家庭に優しい考えを持っているのだ」
「そうっすかね」褒められてついついへらっと笑う俺は、「やっぱり切ない」と先輩がこっそりと涙を呑んでいたことを知る由もなかった。
俺達の会話を聞いていた向かい側のご姉妹さん方が苦労しているんだな、と同情を向けてきたんだけど、残念な俺はまったく気付くこともなかった。
不慣れなナイフやフォーク、スプーンを使って食事を進めていると、
「そういえば」
咲子さんが話題を切り出してきた。
「お父さまと、お母さまは? 真衣。貴方と一緒だったでしょう?」
「お二人はまだお仕事の真っ最中なの。私は会合の途中で抜け出してきて……ちょっと疲れてしまったから。じきにお戻りになると思うわ」
「そう。あまり無理しないようにね。貴方、竹之内財閥を任される立場とはいえ、まだ学生なんだから」
「ありがとう」
真衣さんは微苦笑を零す。どことなく疲労交じりの笑みだった。
真衣さんは大学生なんだそうな。
なのに財閥の将来のために会合とか、取引先への視察とか、色んなことをこなしているらしい。
聞けば、咲子さんや瑠璃ちゃんもそれに似た勉強はさせられているらしい。
勿論先輩も例外じゃない。四姉妹各々勉強させられているらしいんだ。
令嬢って本当に大変なんだな。
向こう側にいる三姉妹はあれやこれや、勉強や仕事の愚痴を零している。



