スマホを上着のポケットに仕舞った鈴理先輩はガッチリと俺の腕を掴んできた。
勿論、逃亡防止対策だと思う。
この時点で今日の昼休み時間はオワタ。逃げられねぇ。
ということは、どうにかして貞操だけは守らないと。
こんなことを考えるだけでも男としての自尊心が多々傷付けられるんだけど。
鈴理先輩からアタックされて今日に至るまで、男としての自尊心が、男としての何かが傷付けられっぱなしなんだけど。俺。
心中で泣いている此方に対し、鈴理先輩は涼しげな顔で出入り口を親指で指した。
「今日は有意義に食事の時間が取れるから学食堂に行くぞ」
「学食堂っすか?」
「あんたと一緒に食事をしたことがなかったし、良い機会だ。少しは会話も楽しまなければな」
珍しく不謹慎な台詞を言わなかったな、鈴理先輩。
でも言われてみれば、そうだよな。
いつも先輩から逃げているから一緒に食事なんてしたことなかったよな。
食事が終わった頃に先輩が俺を見つけては追い駆けてくる毎日だし(結局捕まるんだけどさ)。
先輩もどこかで飯を取って、俺を追い駆けているんだと思うけど。鈴理先輩と飯か。
うーん、悩みどころだぞ。俺、弁当だしな。
「それとも食事前に運動という名の「学食堂、喜んでお供します!」
敬礼する俺に、「良い返事だ」鈴理先輩は満足気に頷いた。
この時の俺達は甘いというより主従関係に近い空気があったと思う。
付き合っているというよりも親分と部下みたいな感じ。
でもでも不謹慎な言葉を教室で言われるくらいなら、俺は先輩と有意義な昼食時間を取るぞ。
ああ取ってみせるさ。
今だって俺と先輩はクラスの連中から大注目を浴びているんだ。不謹慎なお言葉を言わせるわけにはいかない!
俺は先輩と一緒に、クラスの連中の注目を浴びながら教室を出た。



