鈴理先輩の怒りは尋常じゃないらしい。
召使たちを萎縮させるほどのようで、説明しているメイドさんの表情が暗い。
も、申し訳ないです! 俺は此処にいますよ!
「困ったのう。鈴理お嬢様は御姉妹の中で一番、寛容ある方じゃ。そのお嬢様が機嫌を損ねられている。相当のものじゃ。簡単には直らんぞ」
「あの……すみません」
「一刻も早く彼氏様を見つけ出さないと……今のお嬢様は私どもでは手がつけられません」
「なら、わしが行こう。主等は引き続き彼氏様の捜索を続けるのじゃ。ああ、お前さんはお嬢様の気を落ち着けるための茶を淹れて部屋に来い。淹れ方は彼女に聞くんじゃぞ」
「え、あ、ちょっと」
新人研修は後回しだ。
竹光さんは溜息混じりに台詞を吐いて駆け出す。
完全に置いていかれた俺は竹光さん以上に深く重い溜息をついて額に手を当てた。
どうしてあのじいさんは俺の話をちっとも聞いてくれないんだろう。
せっかちな性格なのかもしれないけど。
それにしたって俺の話をちょっとくらい聞いてくれたっていいじゃないか!
勘違いしたあんたのせいで大騒動になっているんだからな!
「あーあ」
ガックシ肩を落とす俺に気付いたのか、メイドさんが「初日なのに大変ね」と心遣いを見せてくれる。
苦笑を零す俺は、「いいんっすよ」貧乏くじを引くタイプだからと目尻を下げた。
取り敢えず、お茶を淹れようかな。
先輩にお疲れ様のお茶をさ。
折角の執事だ。
ちょいと演出したいじゃないか。
……死んだってメイド服は着ないけどさ。
ああ着ないとも。おにゃのこポジションでもな、ぜぇえったい着てやんねぇ!



