前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



着替えと竹之内家の豆知識を学んだ俺は竹光さんと一緒に母屋に戻る。


驚くことに、母屋で目の当たりにしたのは大騒動だった。

室内だと言うのにも拘らず、召使達があれ此処にもいない。やれ此処にもいない。


どうしたものかと声を上げ、ばたばたと走っている。


一体全体どうしたのだ、竹光さんが召使(メイドさん)の一人に声を掛けると「大変なのですよ」メイドさんがおろおろと物申す。


「先程。鈴理お嬢様がお戻りになられたのですが……とてもお怒りの様子でして」

「なんじゃと?」


先輩帰っているんだ。

怒っている理由は、なんとなく分かるような気が。


「実は。彼氏様が母屋に来られていないようで。それについてお嬢様が」


嗚呼やっぱり、俺はゲンナリと肩を落とした。余所でメイドさんがオロオロと竹光さんに話を続ける。


「鈴理お嬢様はてっきり客間に彼氏様がいると思っていたそうなのですが、お部屋に行っても誰もいなかったそうで。不思議に思って私どもに尋ねてきたところ……誰も客間にご案内していないが判明致しまして。ことを知った鈴理お嬢様がお怒りになられました」


楽しみにしてくれていた分、俺がいなかったからプッツンきたんだろうな。先輩。



「只今、総出で彼氏様を探しているのですがお姿が何処にも見られないのです。田中さんがお屋敷前までご案内したことは確かなので、門から母屋までの道のりで何かあったのではないかと……200m区間ではございますが、もしかしたら人攫いに遭遇したのではないのか」



こ、此処にいます。

人攫いなんて滅相もない!


「ただの迷子なら良いのですが、携帯に連絡しても一向に繋がらないそうです。鈴理お嬢様はとても心配しておられます。

執事長、いかがなさいましょう。
此処の防犯システムは完璧ですので、人攫いはないかと。迷子、もしくは手違いで別の部屋におられるかもしれませんが、なにぶん屋敷は広いもので。総出で捜してはいますが、私どもはお名前のみしか存じません」