「あたしの下で存分に鳴くがいいさ。
なに、最初は優しくしてやるつもりだ。あたしも鬼じゃない。男女の初営み、所謂初セックスというものは誰しも緊張を覚えるもの。
最初は優しく、な? まあ鬼畜には憧れる故に追々そういう道に進むとは思うが」
口を開けば開くほど、美人先輩、男前。俺様。
いや、あたし様……この人は初対面に向かってナニ不謹慎な発言しているんだよ。
「おっと、その前に飯を食ってしまわないとな。いや先にヤッてしまうべきなのか。お前はどっちがいい? 空」
トレイに乗った食事と俺を交互に見て、美人先輩は俺に選択肢を与えてくれた。
ろくな選択肢が無い気がするのは俺の気のせいだろうか。
「勿論、どうぞどうぞお食事を堪能して下さい」
「なるほど、先にセックスを取るか。あたしは構わない」
俺も構いませんよ。どうぞお食事……ちょっと待って。
「どういう耳をしているんです。俺はお食事を選びました。所有物ってナンッスか?!」
「それを教えてやるために体で」
「ヤらないでいいっすから。先輩、女性ですよ! ナニ言っているんですか!」
「女がセックスを求めて何が悪い? 男がエロイ生き物だと世間一般論は廃れた。女だってエロイ生き物だ。本能で生きる動物なんだぞ」
「俺と先輩は初対面っすから! 俺、知らない人とセックスなんてできません!」
「馬鹿、もう知り合っただろ?」
「俺は貴方様のこと存じ上げません」
「あたしは二年F組の竹之内鈴理だ。あんたは一年C組豊福空。ほらみろ、これで知り合いとなった。互いの名を知ったのだからな」
「屁理屈っすよそれ。俺、ゼンッゼン先輩のこと知りませんから」
「諸々の詳細はベッドの上で語り合えば良いじゃないか。そのための男女の営みだろ」
「何故にすべての物事をそっちの方向に持っていこうとするんですか?!」
学食堂の真ん中で俺達は堂々不謹慎な台詞を吐き捨てあっていた。
オブラートに包むも何もヘッタクレもない。
周囲から大注目を浴びていたけど、その時の俺達には周りが見えなかった。
欲と貞操の攻防戦を繰り広げていたから。
これが俺、豊福空と鈴理先輩の出逢い。ロマンチックも何もない。寧ろ、ろくでもない出逢いを俺達はしたんだと思う。
この日を境に俺の学園生活は一変することになったんだ。