「ということだ。鈴理、俺は何もしちゃねえぞ」
「空と大雅が友達、ねぇ……馬鹿を言え! それでは王道に反するぞ! いいか陰湿陰険許婚が彼氏を苛め倒し、あたしがそれを助ける。
それにより、あたし等の仲が深まって、濃厚な一夜を過ごす。これが王道プロットだろ?! なんであんた等が仲良くするのだ! 折角のシチュエーションを……まったく空気が読めん奴だ」
「はあ?! 俺って、そんなにも嫌味キャラかよ! お前の彼氏と、お前の許婚が和気藹々メシろ食っていちゃいけねぇってか?!」
「だから、空気を読んであたしと空の恋愛シチュエーションに協力しろと言っているのだ」
鈴理先輩の中じゃ、俺は大雅先輩に苛められる予定だったんっすか。物騒な。
俺自身も、最初こそ苛め……っつーか、嫌味罵倒その他諸々なことは言われるんじゃないかと思ってはいたけど、話してみるとイイ人だったよ。
身勝手ではあるけどさ。
「まったく」
間違った方向に憤っている鈴理先輩は椅子を引いて、俺の隣にどっかりと腰を落とす。
ジトーッと相手に見つめられる。
含みある視線に俺はドッと冷汗を流す。
なんか、すっげぇ責め立てられている眼なのだけど。
視線を泳がせて、必死にごぼうスティックを噛み砕く。
すると彼女は小さく吐息をついて俺の弁当箱の右隣に可愛らしい弁当箱を置く。
豊富なおかずに目を瞠り、つい先輩を見つめた。
ぶうっと脹れている先輩は、「これはあんたのだぞ」と視線を返してくる。
「急にキャンセルされて、これの処理に困ったんだからな。
いいか、空。あんたはいつでもあたしの隣に座っとかないといけないんだぞ。所有物のクセに、一丁前にキャンセルとか。あんたの弁当だけでは足りないだろ?」
「うっ。それはすんません……そしてサンキュです。頂きます」
綻べば、むくれている先輩の表情が和らいだ。
先輩はその顔のまま言うんだ。「で、仕置きは何がいい?」って。
わぁいとおかずに箸をつけようとした俺は、手からそれを滑り落とす。
待て、なんでそこで仕置き……そ、そりゃあ、急に昼食キャンセルしたのは悪かったと思うけど。



