「先輩が俺を好きって言ってくれた。そんな彼女を知りたくなって、付き合おうって思いました。単純且つ明確な返答でしょ?」
「財閥の娘って知っているのにか?」
「勿論知っていましたし、正直不釣合いだって思ったっすよ。でも友達に言われました。『まずは身分を問わずに相手の気持ちを考えろ』と。
ぶっちゃけ意識もし始めていましたしね。理由ばかり付けて逃げるのやめて、先輩のこと知ろうと思いまして……今に至ります」
気恥ずかしい告白をしている自覚はあったけど、全部正直な気持ちだ。
「鈴理といて楽だろ? 財力的にさ」
不意に聞かれた質問に俺は頭上に疑問符を浮かべ、キョトンと相手を見た。
「財力的に、いえ、お付き合いしてもさして生活状況は変わりませんよ。変わったといえば、お弁当がご馳走になったことっすかね。そりゃ携帯電話は借りていますけど、俺がバイトするまでって約束を取り交わしていますし。
うーん、先輩に気遣わせている点は否めませんけど。この前のデートだって、私服のことで相当気を遣わせてしまいましたし」
「なんだ、テメェ、鈴理にねだらないのか? 服とか、ゲームとか」
「なんで? ねだる必要あるんっすか?」
わけが分からない。
なんで鈴理先輩におねだりする必要があるのだろうか。
家族じゃあるまいし。
相手は彼女だろうと他人だぜ? おねだりとか常識的にしないだろう。
「必要ねえ?」
大雅先輩が首を傾げてくる。
「必要ないというか……そりゃ確かに俺の家は貧乏っすけど、それが恥ずかしいって思ったことありません。先輩に何かしてもらおうと思って付き合っているわけじゃないですし。好意を寄せてくれる先輩を知りたくて、付き合い始めた。それが彼女の隣にいる理由です」
「けど、ねだれば買ってくれるんじゃね?」
「大雅先輩。鈴理先輩は俺のお母さんじゃないんですよ。物をねだるなんて馬鹿みたいじゃないですか」
うわぁあああ、ショックだ。
やっぱ貧乏くんがお嬢様と付き合うと、そういう意図があるんじゃないかって疑心を向けられるんだな。
周囲にそういう目で見られたりしちゃうんだな。
不釣合いだけで罵声を浴びせられるならまだしも、これはちときついぞ。
ズーンと心中で落ち込んでいると、
「そうかお前、そういう風に鈴理を見ているんだな」
二階堂先輩がフッと頬を崩してきた。



