俺は必死に足を踏ん張った。
二階堂先輩が連れて行こうとした場所は窓際。
嫌だ嫌だ嫌だ此処は四階だぞ、高いじゃないか、怖いじゃないか! 高ければ高いほど俺、パニくるんだぞ!
それでも引き摺って行こうとするものだから、俺は二階堂先輩の体にしがみ付いた。
「だぁあ!」
何するんだ、と二階堂先輩から怒鳴られるけど、怖さか、羞恥か、選ぶとしたら後者を選ぶね!
相手が男であろうとかまわない、俺は窓際に行きたくないっ!
嗚呼っ、四階と思うだけで身の毛がよだってきた。体の芯から震えてきた。
怖い、嫌だ、怖い、怖い――ッ!
「あー……確かに極度の高所恐怖症みてぇだな。悪かったって。もうしねぇから、な? ちと試そうとしただけだっつーの……んな顔するなって。俺が苛めたみてぇじゃんかよ」
文字通り、あんたが苛めたんだろうよ! やだもうっ、お教室に帰りたいっ!
脚が竦んで動けなくなった俺を壁際まで引き摺った二階堂先輩は、無理やりくっ付いている俺を引き剥がすとその場に座らせてくる。
次いで、自分も腰を下ろした。
まだ恐怖に身を震わせている俺は、
「高くてもヘーキ。俺は鳥、鳥なんだ。飛べるんだ」
デンジャラスなことを言って自分を慰めていた。
「悪かったって」
謝罪してくる二階堂先輩は、絶対にもうしないことを約束してくる。
「だから落ち着けって。マジで」
いや分かっている、分かっているよ?
でもちょい平常心が……はぁ……徐々に落ち着いてきた気がする。
ふーっと息を吐いて、俺は軽く膝を抱えると、胡坐を掻いている先輩に目を向けた。
「それで? 俺とナニをお話したかったんっすか? こんなに隅々まで調べたってことは……やっぱり許婚としてっすか?」
「んー、まあ、それもあるにはあるけど。あ、チャイム」
「いいっすよもう。気分的に受けられそうに無いんで」
今更でしょ、それ。
深い深い溜息をつく俺に、「そりゃそうだ」二階堂先輩はうんっと一つ頷くと、間を置いて口を開いた。
俺に質問してきたその内容は、なんで鈴理と付き合い始めたのか、だった。
突拍子も無い質問だったけど、予想できない質問だったわけじゃない。
俺も間を置き、ちょっとばかし考えさせてもらう。
適切な言葉を探して探してさがして、返答。



