丁度、白飯のおかわりが欲しかった俺は茶碗を持って席を立った。
やっぱハンバーグにはライスだよな。
一緒に食べてこそ美味さが引き立つ。
ルンルンと軽い足取りで受付カウンターに向かっていると、突然真横から衝撃を受けた。
人とぶつかったんだということは分かったんだけど、その人に謝罪する前に俺は視界に映った零れそうなフルーツの盛り合わせの皿を慌てて手を伸ばした。
どうにか放り出されたフルーツの盛り合わせを上手くキャッチすることができた俺は、何一つ床に落ちてはいないことを確認すると胸を撫で下ろした。
そして謝罪を口にし、ぶつかった人物に皿を差し出す。
直後、俺は面食らった。
目を瞠ってしまう美人さんが俺の前に立っていたからだ。
相手のネームプレートカラーに視線を流す。
今年の新入生のネームプレートカラーは黄。
彼女の持つネームプレートカラーは赤。一学年上の先輩だと認識できた。
こんな人とぶつかってしまったなんて、事故だと分かっていても申し訳ない。
「す、すみませんでした。気を付けます」
態度を改めてしまうほど本当に超美人。
嗚呼もう、女優さんみたいに美人。
目を合わせれば、クスッと小さく笑われた。
わぁああ、笑うお姿も美人なんすね。
赤面した俺は何度も頭を下げて、おかわりもせず逃げるように席に戻った。
空っぽの茶碗を片手に戻って来た俺に、駄弁っていたアジくんとエビくんは揃って不思議そうな顔を作る。
「おかわりはいいの?」
エビくんの問い掛けに俺は必死に頷いた。
美人さんにぶつかって情けなく動揺している、なんて言えないよな。
でも誰だって動揺するぞ。
あんな美人さんにぶつかったらさ。
得をしたのか、損をしたのか、分からない出来事だったな。
長々と重い溜息をついて身を小さくしていると、「あの……」「えーっと」フライト兄弟の戸惑いの声が聞こえた。
おずおずと顔を上げて、二人の戸惑いを目にする。
激しく動揺した。
たった今さっきぶつかった美人先輩が、前触れもなしに俺達の前に現れた。
も、もしかしてぶつかった時に制服でも汚しちまったのか。
それともトレイに入っている飯のどれかが零れちまったとか。
それだったらごめんなさい、残金150円ですができる限り弁償はします。