コノヤロウ、好きで立っているわけじゃないんだぞ。女子ポジション。
先輩の前では譲ります宣言をしたけど、やっぱ男子ポジションに立ちたいんだよ。
受け身でへなちょこ男な俺でもさ!
キング・オブ・男前アジのように、俺も男前になりたいんだよ!
泣き落としとか、ぜぇってやだ! ダッサイ!
嫌がる俺に、「んじゃ逃げ回るしかないじゃん」エビくんが典型的な対策を口にした。
そりゃそうだけどさ。そりゃそうなんだけどさ。
ただ逃げ回っても結局は捕まっちまいそうなんだよ。賢い逃げ方を考えないと。
どうしようかなぁ、溜息をついてフライト兄弟と廊下を歩く。
のたのた歩いていたせいか、チャイムが鳴った。
これは授業終わりのチャイム。
体育はちょい早く終わるから……あと10分で着替えてしまわないと、次の授業に間に合わないぞ。
「アジくん、エビくん、急いで教室……ゲッ!」
「どうした、空?」
「蛙が潰れたような声を出しちゃって」
急停止する俺を不思議そうに見てくるフライト兄弟。
けれど俺の視線は彼等の向こうに留まっていた。
これはUターンするべきだよな、ああするべきだよ。
教室の前で腕を組みながらぶっきら棒に宙を睨んでいる生徒の前を素通りする勇気、俺には1ミリたりともないぞ。
ぎこちなく踵返す俺に、「空くん?」「どうした?」フライト兄弟が積極的に声を掛けてくる。
あああっ、頼むから声を掛けてくれるな! 向こうに気付かれ「来たか、豊福」
……気付かれちまった。
肩を落として俺はぎこちなく振り返る。
『ジョーズ』のBGMが聴こえてきそうな歩みでやって来る男子生徒、その生徒は先輩であり、一応顔見知り。
俺の恋敵と言うべき存在なのかな?
とにもかくにもお会いしたくなかった人、二階堂 大雅先輩だ。
ズンズンドンドンダンダン足音を鳴らして、俺の前に立つ二階堂先輩は「遅いんだよ」開口一番に文句を垂れてきた。
「俺が教室に行ったら、お前がいて当然だろ? なーんでいねぇんだよ。この俺を待ち人にさせやがって」



