なのに一喜一憂する彼女に心躍る俺がいる。
しょーがないから、ヒロインになってあげようじゃないか。
可愛くも、美人でもない、残念平凡なヒロインだけど、ついでに男でもあるけれど(男の娘でもないよ!) 、ヒーローを望む彼女の願いを叶えてやりたい。
全部は無理だろうけどさ。
そりゃ扱いには超嘆くかもしれないし、逃げる時だってあるかもしれない。
いや……大半は逃げると思うけど、それでも極力は彼女の我儘を聞いてあげよう。
セックスその他諸々の不埒な事は置いておいて、ヒロインポジションに立ってあげよう。
「俺は貴方のことをもっと知りたい。だからあなたも俺のことを知って下さい」
誰のためでもない、本気で好きだと言ってくれた、肉食系お嬢様のために。
けれど先輩、覚えていて。
貴方の根は女性。
何か遭ったら、そのポジションは俺に返してください。
一時でいい、俺にヒーローをさせてくださいね。
呆けた顔で語り部を見つめていた鈴理先輩だったけれど、見る見る顔が赤くなっていく。
今度は怒りじゃない。
好意に対する赤面だ。
どうやら獰猛お嬢様の守備力はすこぶる低いようだ。攻撃力は神並に強いというのに。
顔が赤いとからかってやれば、「煩い!」空のくせに生意気だと彼女。
無遠慮に背中を叩き、その感情を必死に隠そうとする。
そんな彼女に俺は一つの疑問を投げかける。
「先輩。どうして俺を好きになってくれたんっすか?」
一年前から片思いを抱いていたと言ってくれたあたし様。
ということは、中学生の時に俺と彼女は出逢っている。
けれど俺の記憶にはない。
何処で俺達は出逢ったのだろう? 彼女ほどの美人さんなら忘れるのも難しいと思うけど。
本調子を取り戻した鈴理先輩は舌を出した。「今は秘密だ」
「空があたしのところまで落ちてきたら教えてやる。今は言ってやらん」
「えー、ケチ」
「ケチにケチと言われたらおしまいなのだよ」



