確かに先輩はヒーローに憧れている。
ゆえに女性らしく振る舞え、と言われても難しいだろう。
「一令嬢として竹之内財閥を任せるには、些少ならず不安を抱いたのだろう。期待を寄せてこなくなった。嬉しい反面、見切られたのだと寂しい念を抱いたものだ。そして我が儘なことに、期待は両親の愛情と思っていたあたしは悲しい気持ちに駆られたんだ。
多忙な両親の愛情を感じられるのは期待感が一番だったからな。
父さまと母さまの期待に応えられる娘にはなれなかった。自分を偽ってまで、演じられたら良かったのだが、あたしもプライドが高くてな。
本来ならエレガンス学院ではなく、姉妹たちが通っている隣町の女学院に通う予定だったのだが……自分の肌に合わないと理解していたからやめたんだ」
「先輩」
「後悔はしていない。あたしはエレガンス学院で新たな友に会えた。あんたにも会えた。この道に悔いはないさ。悪いな空、つまらない話を聞かせてしまったな」
なんとなく先輩の脆い部分を垣間見た気がする。
金持ちには金持ちの、貧乏には貧乏の家庭事情ってのが存在するんだな。
育つ環境が違っても、何かしら障害にぶつかっては苦しんだり悩んだり辛酸を味わったり。
何処も同じなんだよな、きっと。
障害の種類が違うだけで、何処の家庭でも何かしら事情が存在する。
目前の水景を見つめる。さざ波を立たせている水面は、きらきらと太陽の光を反射させてとても綺麗だ。
「先輩。俺がどうしてエレガンス学院に入ったか、話しましたっけ?」
「ん? 補助奨学生を狙ってではなかったか? 金銭的な面を気にしてのことだろう?」
うん、その通りだ。
けれど、それだけじゃ説明不足なんだ。
俺が本当に学院を目指した理由は、それだけでは説明不足。
「正直に言えば、都立校でも十分でした。行けないことはなかったんっすよ。でも俺は、両親に金を使わせたくなかった。俺のために金を使うなんて“無駄遣い”だと思えて」
視線が俺を捉えて放さない。
微苦笑を零し、俺は鈴理先輩と瞳を交わす。
「俺が養子だから、と思ってしまうんっす」
困惑と驚愕の含んだ眼が俺を射抜いた。
「養子だから?」
遠慮がちに聞き返される。
俺は大きく頷き、本当の子供ではない苦心を表に出す。



