前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―






百貨店を飛び出した鈴理先輩を追うために、街道を突き進む。


未だに走る彼女を捕まえることはとても難しい。


あの足の速さには感服するよ。

逃げ足の速い俺を捕まえるだけあるよな。


「先輩、止まって下さい!」


俺の呼び掛けを総無視する鈴理先輩は、淡々と歩道橋を上り始めた。


ゲッ、ちょ、ちょっと待って下さいっすっ!

おおぉおお俺、歩道橋は不味いんだけどっ、だって俺、極度のっ、極度の高所恐怖症!


せ、先輩も知っているでしょう!


下では自動車達が走っているとかっ、激怖!


ああぁああっ、でも今の先輩は頭に血が上っているようで、歩道橋の階段を上り切っている。


躊躇いを見せていたら見失ってしまう。


目を瞑って段を上りきると、火事場のなんちゃらで先輩の背を追い、やっとの思いであたし様を捕まえることに成功する。


「放せ」腕を振る彼女に、「嫌っす!」全力で拒絶。


それでも手を振ろうとするものだから、俺は声音を張った。


「手放さないって言ったのは先輩じゃないっすか! だったら、ちゃんと手を握っておいて下さいよ! 俺は貴方の本気を誰より知っていますから!」


鈴理先輩の動きは止まり、目を瞠ってくる。


「そうでしょう?」


俺は同意を求めた。


「こんな男を襲ってはキスをして、キスをしては好きだと言ってくれて。本気だと認めざるを得ないじゃないっすか。知っています、貴方の本気。そして俺が金目当てで先輩とお付き合いしているわけじゃないと、先輩は知ってくれている。

それで俺は十分です。二階堂先輩にあんなことを言われた時は、ほんと、焦っちゃいましたけど……周囲に浮気心を持つなと言われましたしね。俺は貴方を信じますから」


「……空」

「さっきの告白も焦っちゃいました。顔から火が出るかと思いましたよ」


おどけると、鈴理先輩の強張った表情が崩れる。


「悪かったな」


少し取り乱してしまった、彼女が真摯に詫びてきた。


俺の手を握り返し、もう放さないとはにかんでくる。


それは良かった、俺は相槌を打ち、彼女と同じ顔をしたまま、体をぶるぶると振動させる。


「空?」


訝しげに顔を覗き込んで来る彼女に、「お、お願いが」半べそで懇願。