いや、彼女はお似合いのカップルと言われたいんだ。

だから着替えてくれたんだ。


「じゃあ、今度はお似合いになるように俺の服の買い物に付き合って下さいね」


俺の態度は彼女を無意識に傷付けていたに違いない。

お似合いと言われる努力もしていないくせに微々たることで気にするなんて、俺も器がちっちゃいな。


「もちろんだ。あんたはあたしのものなのだから、釣り合わないわけがないのだよ」


一喜一憂する彼女が本当に可愛いと思うようになってきてしまった。

おかしいな、彼女は俺とは対照的な性格をした雄々しい性格の持ち主。


獰猛な肉食系お嬢様なのに。

変わった嗜好の女の子なのに。


そんな彼女をもっと喜ばせたくて、俺は柄にもなく言ってしまう。


「なら幸せな彼氏、いえカノジョっすね。俺」

「……据え膳食わぬは女の恥なのだよ」


目を据わらせたあたし様に危うく店内で襲われかけたのは余談にしておく。言わなきゃ良かった!



店を出た後は、服のお礼として彼女の我儘に付き合い、アイスクリームを食べに地下売り場に向かう。


鈴理先輩は大のチョコミントアイス好きで、カップ指定の三段重ねアイスをどちらともそれにしていた。

舌を巻く光景だったけれど、彼女はとても幸せそうだったからよしとしよう。


俺のストロベリーアイスを狙っているあたし様が「食べさせろ」とご命令してきたから、スプーンで掬いおすそ分け。


ご満悦に自分のアイスを俺に食べさせ、傍から見れば本当にらぶらぶしているだけのカップルに成り下がる。


けれど本人達は楽しかった。

いいじゃんか、お初でーとくらい、有意義に過ごしたって。


学院ではできないような糖分多めなことをしたって罰は当たらないと思う。


デートなんだ。

お嬢様と平民じゃ価値観も違うし、所持金や嗜好もまるっきり違うけれど、和気藹々デートを楽しみたい気持ちは一緒。

いつしか彼女と釣り合うかな、という考えも忘れ、俺は存分に先輩との時間を楽しんだ。


「た、隊長。我々はいつ、二人に突撃するんですか。デガバメつらいんですけど!」

「もう少し待て。豊福空がトイレで席を立った時を狙うのだ。ひとりになったところを皆で襲う。これでいこう。作戦C『彼氏がいつまでも帰って来ない激おこ!』だ」


……何か声が聞こえたような気がするけど、ま、いっか。