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さて此方は、某テーブル。
「(お・の・れッ……豊福空っ、鈴理さまとあんなにイチャイチャのラブラブっ。しかも食べさせ合いっこ、だと? 死刑ものじゃないかっ、キィイイイッ!)」
「(落ち着け高間。向こうに声が聞こえてしまう。嗚呼しかし、これはなんったる苦行なのだろうか! 廃人になりそうだ!)」
グググッ。
メニューを握り潰す、いや破り捨てる勢いで握力を籠めていく姿が二つほど見受けられた。
謂わずも『鈴理さま見守り隊』の親衛隊隊長と副隊長である。
二人のおでーとを邪魔するべく、変装までしてパスタ店に入った二人の胃はストレスのあまりによじれそうだった。
何故ならば我等のアイドルが憎きあやつとイチャイチャラブラブオーラを以下省略。
食べさせ合いっこなんて天に召されそう以下省略。
まずデートという時点で以下省略。
ショックのあまりに泣きそうである。
いやもう若干泣いていますがなにか?
だったら、デガバメなんて止めれば良いという話なのだが、そうは問屋が卸さない。
我々は『鈴理さま見守り隊』、アイドルを見守る立場、そしてこっそりと彼女を守る騎士でもあるからして……つまり結論から言えば、あの一年坊がアイドルとお付き合いしているという真実を抹消したいのだ!
そのためなら何だってしてやる。ああ、してやるとも。
あんなイチャイチャを見せ付けられようとも、苦行という名の辛酸を味わおうとも!
誰がなんと言おうとも此方の暴走……ゴッホン、信念は曲げられないのである!
「(先程の騒音揶揄作戦は失敗したな。周囲の声を耳にすれば彼女は失望すると思ったのだが)」
「(寧ろ聞こえていないようでしたよ隊長……泣きたいですよぉお!)」
「(泣くな高間。泣いても現状は変わらないのだぞ! ……よし、作戦Bを決行する)」
うんっと頷き合う二人は、メニュー表を眺めながら、やや声のボリュームをアップする。
「なあ思うんだ、タカ」
「なんですか先輩」
呼び名を一々変えて、切り出した話題は向こうにとって痛烈であろう話題。
向こうに聞こえるように会話をする。



