さてさて先輩の一方的なタジタジ攻めを受けていると、オーダーしていたヴォンゴレ・ロッソというイカツイ名前の付いたパスタがやってきた。
異文化の壁さえ感じたヴォンゴレ・ロッソとは一体どんなものなのか。いざ拝見してみる。
アサリがパスタに入っている。
トマトっぽいソースにパスタに絡めている、だけのよーなー。
ナニ? ヴォンゴレ・ロッソってのはアサリ入りミートソースのことなのか?
だったらミートソースパスタあさり入りと、メニューに表記すりゃいいじゃんかよ。
随分期待したというのに。美味しそうだけど。
パスタの入った皿と睨めっこしていたら、先輩が笑いながらおしぼりで手を拭き始めた。
どうやら俺の心境を見透かしたらしい。
「ヴォンゴレ・ロッソはイタリア語だ。
ボンゴレとも表記するのだが、意味はアサリ。正確には“二枚貝”という意味だ。そしてロッソの意味は赤。つまりヴォンゴレ・ロッソとは二枚貝入りトマトソース和えパスタということだ。
ちなみにトマトソースを使わないのがヴォンゴレ・ビアンコ。ビアンコはイタリア語で白という意味になる。他にもバジリコを使ったヴォンゴレ・ヴェルデ(緑)、ヴォンゴレ・ネロ(黒)といったパスタもあるぞ。
まあ、洒落た名前を付けた方が店的にも見栄えがいいだろ。なにぶん日本というのは西洋に憧れている面があるからな」
淡々と説明してくれる先輩って超物知りだな。
こっちはミートソースをボロネーゼって呼ぶことさえ知らなかったのに。
さすがはお嬢様だな。
とにかくヴォンゴレは貝を使ったパスタってことだな。
アサリパスタ。よしよし、覚えておこう。
俺は知識をまた一つ蓄積させながら、両手を合わせて頂きます。
早速ヴォンゴレ・ロッソを頂くことに……ん? えっーとお箸、おはし、は。
「空。フォークならそこにあるじゃないか」
「え? あ、ああっ、どもっす」
実は目で必死にお箸を探していました、なんて言えない残念貧乏学生の俺は慌ててフォークを手に取った。
ですよねぇ。
お箸なんて此処にないですよねぇ。
でも食いにくくないっすか? フォーク。
俺の家ではめん類を食べる時は全般お箸なのだけど。



