前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



見渡す限り、西洋を意識した室内模様。

日本人が西洋に憧れを抱いていることを主張しているかのような、モダンなテーブルに椅子、天井にはクルクルとプロペラ(シーリングファンって名前らしい。先輩に教えてもらった)。


レンガ壁に、ワックスの利いたフローリング。


下に目を落とせば照明の光が、フローリングの表面に当たって反射している。


まあ、何が言いたいかっていうと、それだけ入ったパスタ屋がお洒落店だってことだ。


そいでもってお洒落な格好をしていない、服装KYな俺にとっちゃ……ちょい居心地の悪いところでもある。


先輩に気を遣わせるから表情には出さないけど、お洒落な格好をしている先輩に対して、俺……ほんっと服装に関しちゃ残念だよな。


先輩と比べたら、容姿も残念だけど。


(選んでくれた服は自分で言うのもなんだけど、似合っていたよな。バイトし始めたら服を買いたいな)


メニューに目を通す。

ボロネーゼ、ナポリタン、カルボナーラ、ペペロンチーノ。


見事にカタカナばっか。

スパゲッティなんてミートソースしか食ったことないんだけど。


しかも此処ではミートソースをボロネーゼと呼ぶらしい。

大層お洒落な名前だな、おい。


どれを選んでいいか分からず困惑する俺に、


「決まったか?」


向かい側に腰掛けている先輩が声を掛けてきた。素直に返答する。


「先輩、見たこともない単語ばっかりでよく分からないっす。先輩は何にしたんですか?」

「あたしはヴォンゴレ・ロッソだ」

「……ろっそ? っすか?」

「ああ、ヴォンゴレ・ロッソだ」


おかしい、先輩と俺の間で文化の違いを感じる。


同じ国・地域・場所に立っていて、尚且つ、お互いに日本語ぺらぺらなジャパニーズな筈なのに、何故に文化の違いを感じるのだろう。

俺と先輩の間には異文化が顕在している。


見事に固まっちまった俺だけど、「じゃあ先輩と一緒にします」これ以上待たすのも悪いから、同じものを頼むことにした。

見慣れないカタカナを見るのもヤだったしな。