前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



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世の中のカップルの皆様方は初デートをどう過ごすんだろうな。


やっぱり無難に映画館に行ったりして和気藹々と平穏に時間を過ごしたりするんだろうけど……俺等の場合、普通のカップルとはちょい違う種類。


なにせ肉食系女子と草食系男子、攻め女と受け男と称された(というか先輩が称している)カップル。


「だから空。あたしが空の腕に絡んでベッタリ歩くでは、あたしが面白くないではないか。空がしろ。さあ早く」

「だから先輩。身長的にも立場的にも俺が先輩の腕に絡んでベッタリ歩く、じゃあ目に毒なんっすよ。ここは無難に手を繋ぐ、でどうっすか?」


「あたしのカノジョではないか!」

「彼氏っ、先輩、俺は彼氏!」


ヒヨコのように唇を尖らせ、脹れ面を作る鈴理先輩はしっかり俺の手を握って不満を漏らす。

「空はカノジョなのに」

ぶつくさと文句垂れ、恋愛ケータイ小説では可愛い彼女が彼氏の腕に絡んでいる場面があるのだと俺に説教をしてくる。


またケータイ小説っすか。

心中で溜息をついて手を握り返した。


先輩はどんだけ俺に女の子を強いたいのだろう。

男の俺がしてもアンバランスな光景だろうに。普通のカップルにはなりきれないよな、俺等って。


取り敢えず、形だけ普通のカップルと同じようなことをしながら、俺は先輩と街道を歩く。


今から俺達が行く場所は百貨店。

そこならショッピングも食事もできるだろうと結論が出たんだ。


山手線を使って渋谷駅を目指し、そこから徒歩で目的地に向かう。

渋谷に決まったのは鈴理先輩のご要望があったからだ。


どうやら彼女は一帯を網羅しているらしく、あそこは自分の庭のようなものだから案内役を買うと申し出た。


俺は仕切りたがるあたし様に主導権を譲り、彼女とぶらりぶらり都心の街を進む。

さすがは若者の街で都心、右も左も人でごった返している。


待ち合わせとして人気のハチ公像前には人間が群がっていた。

観光客もいるようだ。


人気スポットの一つだよな。

人とぶつからないように注意を払いながら、鈴理先輩と肩を並べる。



「休日だから人が多いっすね」


「まったくだな。右も左もヒト、ヒト、ヒト。目が回りそうだ! 普段、自家用車で移動している分、このような光景は新鮮且つ慣れないものだ。こんなにも人間がいるのだから、あたし達のような攻め受け逆転カップルがいても良いと思うのだが」