「信号が変わり、私達は歩道を渡り始めました。空さんも両親と私達の姿に気付き、満面の笑顔を見せていました。
しかし瞬間、曲がり角を曲がってきたエンジン音に私達は瞠目。
私は咄嗟に夫に抱えられ、逃げるように庇うように後ろに倒されたため、事を得ませんでしたが、前方を歩いていた両親はトラックに轢かれその場に倒れていました。現場は大惨事となりました。
人盛りができ、誰かは救急車を、誰かは怪我人の意識確認を、誰かは私達に声を掛けてくれました。
何が何だか分からず、騒然とする中、公園向こうで子供が頭から血を流しているという声が聞こえました。
空さんです。
空さんがジャングルジムから落ちてしまったのです。
不幸は続くものです。
両親は轢かれそのまま病院で息を引き取り、空さんも打ち所が悪かったのか、意識不明の重体に。
ようやく空さんが目を覚ました頃には……もう両親は他界していました。以来私達が空さんを引き取り、育てているというわけです。私達は子供に恵まれませんでしたから」
「そんなことが」
「空さんはその時の記憶を忘れてしまっているのか、両親がいないことに首を傾げて毎日のように探していました。
その内、両親はいないんだと理解し、私達を親だと見てくれるようになり、今の空さんがいるわけなのですが……すっかり空さんは高所恐怖症になってしまいました。あの時のことを高さから落ちた恐怖で偽っているのかもしれません」
高所恐怖症が治る、それは空が両親を亡くした日のことを思い出すということかもしれない。
「もしかしたら治っても思い出すことは無いかもしれません。空さんにとって思い出してもどうしようもない、悲しき思い出なのですから――」



