前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



だけどご丁寧なことに土足で上がるんじゃなく、常識を持っているのか脱いだ革靴は揃えていた。

不法侵入時点で常識を持っているか怪しいんだけどさ。


「空さま! 何を起き上がっているのですか!」


あ、あんた達は誰の了解を得て勝手に人様の家に上がっているんだよ!


なんて反論できない俺。

だってグラサンが恐いんだもん。男達恐い、恐いよ。

父さん母さん、ほんとに連帯保証人になったんじゃないだろうな。


この人達、取立て屋じゃないんだろうな。


固まっている俺を余所に男達は素早く行動を開始していた。


突っ立っている俺を布団に押し込んで、一人は俺に体温を、一人は溶けてしまった氷枕を作りに台所へ。

一人は周囲をキョロキョロして異常が無いかどうか確かめている。


「空さまの身に負担が掛かるようなものはすべて遠ざけろ! お風邪に触る!」


グラサンのリーダーらしき男が声音を張った。


寧ろあんた達の存在が風邪を悪化させています。なんて言いたいけど恐くて恐くて。


何なんだよ、こいつ等。

身を小さくしている俺に対し、一人がムッと眉根を寄せた。


ビクッと俺の体は縮み込む。

恐いよぉ、ほんとに恐いよぉ。

男がグラサンをしているせいか、恐さが三倍マシだよぉ。俺が何したってんだよ。


「空さまが寒気を感じてらっしゃる。誰か、湯たんぽの用意を!」


おぉおお俺は怯えているんだよ! あんた達、一体全体何者なんだよ!


意を決し反論しようとしたんだけど、喉が引き攣って咽た。

咳が止まらない。

ゲホゴホと咳をしていたら、「ホット蜂蜜レモンとノド飴の準備だ!」指示が聞こえてきた。


何だかこの人達、俺を看病してくれているような。


……待てよ。


そういえばお松さんをさっき見掛けた。

見掛けたっつーより、窓からこっちを覗き込んできていた。

妙な男達が家に押しかけて来た。しかも風邪のことを気遣ってくれている。



もしかしてこの人達は。



「あのー……ゲホゲホッ」

「無理して喋っては駄目です、空さま。お風邪が悪化します。ノド飴はどちらの味が宜しいですか? 梅とゆずがございますが……、ハッ私としたことが! 動物さん型飴を持って来る筈が! ……申し訳ないのですが、今回は普通の楕円形の飴で我慢して下さい。それでお味は」