あーえーっと。
多分、上司にセクハラされているOLさんの気持ちってこんな気持ちなんだろうな。
なんか色々と複雑。
気色悪いとかは先輩相手だから思わないんだけど、だからって嬉しいわけでもない。
ドキドキもしない、ハラハラもしない、とにかく複雑な気持ちだ。
遠目を作ってセクハラを受けている俺を余所に、鈴理先輩は手をそのままにちょっと身を乗り出して運転席の田中さんに告げた。
「田中! 予定変更だ。今すぐラブホに向かえ! 英会話はキャンセルだ!」
「はい。了解……しませんよ! お嬢さま、またそんな無茶苦茶なことを? そのような場所は、お嬢さまの行くべき場所ではございませんから! お連れしたら私の首が飛びます!」
素っ頓狂な声音を上げる田中さんに俺も彼と同じ声音を上げた。
「先輩ィイイイ! 突然何を言い出すんっすかッ! 田中さん困っていますよ!」
「こんな誘いを受けて断る方がどうかしているぞ! 攻め女たるもの受け男の誘いを断るなんて言語道断。道理に反する。それにこれ以降、もう誘いなんて美味しいシチェーション無いのかもしれんのだぞ。何が悲しくて誘いを断って英会話……」
英語で欲が満たされるとは思えない。
寧ろ満たされたことが無い。
ガックリ項垂れる先輩の手はまだ俺の太ももをお触りお触りし続けている。
俺はこの場合、どうツッコめばいいのだろうか。
いつまでセクハラしているんっす、とツッコめばいいのか。
俺がいつどこで何をどうしたらそっち系に期待しているのか、とツッコめばいいのか。
取り敢えずセクハラまがいなことをしている手を取って、その手を握ることにした。
セクハラ防止対策だ。
俺に手を封じられても先輩は抵抗する気配が無い。
力なく窓枠に肘を置いてぶすくれた顔を作っている。
「お嬢さま」
苦笑いを零し、田中さんは不貞腐れている先輩に諦めてくれるよう説得した。
今日のところは大人しく習い事に行って欲しい。
日を改めてデートをすればいいじゃないか。
そう説得する田中さんに鈴理先輩は切ないとばかりに溜息をついた。
妙に鈴理先輩は物寂しそうだった。



