「どうも弄られたいらしいからな。ばあや、手間を掛けさせてしまうがあいつ等を頼む。お前の迎えは別に出すから」
「かしこまりました。それでは遠慮なく」
ジロッとお松さんが二人に視線を投げ掛ける。
さすがに身の危険を感じたのか、二人は後退り。
その隙に先輩は俺の手を引き正門に向かって歩き出す。
鈴理先輩も考えたな。お松さんに成敗させるなんて。
自分が手を出しても喜ぶだけだって学習したんだろうな。
「ババアに痛めつけられても嬉しくない!」
「鈴理さん! 是非とも貴方に踏まれたい!」
二人の悲鳴を聞いた俺は心中で合掌。
これを機に少しは大人しくなってくれよ、鈴理さまお守り隊。あ、違った。鈴理さま見守り隊。
さて、こうして俺は無事に鈴理先輩と帰ることになったんだ。
けど俺の想像していた帰宅光景じゃなかった。
個人的には徒歩で帰るイメージが強かったんだけど、なんでか俺は鈴理先輩の送り迎えされている車の後部座席に座っている。
家近くまで送ってくれるんだって。
それは嬉しいんだけどさ。
座席とかフカフカで乗り心地いいし、車内はそんなに揺れないし、三十分以上掛けて歩いているから家近くまで送ってくれるとスッゴイ楽なんだけど……あっれー?
一緒に帰ろうってこういう意味じゃ無かったんだけどな。
車に乗っちゃデートもできねぇや。
なーんでこうなっちまうんだ。
しかもさ、
「鈴理お嬢さま。豊福さまをお送りしましたら、英会話教室に直行しても宜しいでしょうか?」
「ああ。五時からだろ? 直行すればギリギリ間に合う」
運転手の問い掛けに鈴理先輩は小さく頷いていた。
どうやら今日は習い事があったらしい。
無理して乗せてもらった感がするんだけど。
「すみません」
俺は詫びを口にした後、鈴理先輩に送ってもらっても大丈夫だったのかを尋ねる。
何なら今から降りてもいいんだ。
だいぶん車で走ってもらったし、いつもよりも随分楽ができた。
此処で降ろしてもらって、先輩には気兼ねなく習い事に行ってもらいたい。
そしたら鈴理先輩が不機嫌面を作った。
ムスッと腕を組み、「空はあたしと一緒にいたくないのか?」と脹れている。
勿論そういう意味じゃない。
一緒に帰りましょうって誘ったのは俺からだし、さ。



