前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



上履きから下靴に履き替えて鈴理先輩と和気藹々話しながら正門に向かう。


このまま何事も無く帰れる。


当たり前のようにそう思っていたら、


「ちょっと待ちたまえ」

「幸せそうな顔しているんじゃねえぞ!」


悪態を付かれた。


妙に聞き覚えのある声。

嫌々声のした方を見ると先日一悶着起こしてくれた親衛隊の隊長と副隊長が腕を組んで仁王立ちしていた。


相変わらず『I Love Suzuri !!』鉢巻を巻いている二人が痛い。


「またお前等か」


溜息をつく鈴理先輩に二人は鬱陶しがられたと胸キュンしている。


何かこいつ等……鈴理先輩に何されても喜ぶんじゃねーの?

奴等がMだからとかそんなの関係ない気がする。


動悸を抑えつつ副隊長の高間先輩が俺にガンを飛ばしてきた。んでもってビシッと指差してくる。


「一年C組豊福空! お前、鈴理さまと一緒に帰ろうなんて身の程を知れ!」

「鈴理さんと一緒に帰りたくば、親衛隊を踏み越えていけ!」


おいおいおい。

『鈴理さま見守り隊』に改名したんだろ、あんた等。

俺と先輩の関係には口出ししない。


そう鈴理先輩から約束させられたんだろ。


なんで口出ししてくるかなぁ。

そりゃこれからも関わっていくとは宣言されたけどさ。


こんなにも早く関わりを持つとは思わなかったぞ。


溜息をつく俺に対し、鈴理先輩は思案するように自分の顎に指を掛けて一つ頷く。


「あんた等を踏み越えていけばいいのだな?」 


途端に隊長と副隊長の息遣いが荒くなった。


うっわぁ、鈴理先輩に踏まれたいんだな。お前等!


「良かろう」


鈴理先輩は意地の悪い笑みを浮かべた。


ちょ、鈴理先輩。先輩が手を出すと二人とも大喜びしちゃうって。


こういうのはシカトするのが一番だと思うんだけど。


「あの先輩」


そっと先輩に声を掛ける。俺の呼び掛けを無視した先輩は指を鳴らした。


すると正門から凄まじいスピードで駆けてくる老婆がひとり。

あれが妖怪砂かけ婆……じゃない、先輩の教育係、お松さんだ。


どう見ても老婆が出す速度じゃない。

言っちゃなんだけど、あの速度を出せるお松さんはちっと恐い。都市伝説になりそうなほど恐い。

「お呼びでしょうか?」

お松さんがサッと先輩の前に立つ。

「相手をしてやれ」

鈴理先輩が親衛隊隊長と副隊長を親指で指す。