言い終わらないうちに先輩が飛びついてきた。
反射的に俺は体を受け止める。
よ、予想外の展開。何事っすか。
あたふたと慌てる俺を余所に鈴理先輩がニヤリと笑いながら、俺の顎に指を掛けてきた。
げっ、この見慣れ過ぎたヤーな展開は。
腰に手を掛けてくるんだよな、この後。
あはは、ほら、腰に手を掛けてグイッと引かれた。
俺も慣れちまったな、この展開……いやいやいや、慣れちゃいかんでしょ。この展開!
着実に俺は女のポジションを固定していっているぞ! 慣れって恐ぇよ!
「先輩!」
慌てる俺に細く笑う鈴理先輩はフフンと不敵に笑った。
「まさか空から誘いがあるとは。んんん? 先にシてる小説に嫉妬したか?」
「ち、違います。誘おうとしている意味を履き違えないで下さい。お、俺は一緒に帰ろうとお誘いを」
「やっぱり誘いか! 空も誘いという行為を覚えたか。しかし何処でそんな誘いという行為を覚えた? ……あたしの見ていないところで」
「今、ワザと“一緒に帰る”の部分を省いたっすよね?!」
俺の鋭いツッコミに鈴理先輩はバレたかと一笑。
やっぱりワザとだったらしい。
でも多少本気だったらしく、残念だというぼやきが聞こえた。
何を俺に期待しているんっすか、鈴理先輩。
引き攣り笑いを浮かべている俺を余所に鈴理先輩は誘いの返事を返してくれた。一緒に帰ろう、と。
思いのほか、その笑顔が無垢だったから俺も素直に照れ笑い。
良かった、一緒に帰れるんだ。鈴理先輩と。
あ、でも先輩の送り迎えは車だよな。
当たり前だけど俺は徒歩だしな。先輩は徒歩で大丈夫かな。デートできるかなぁ。
俺は疑問を抱きながら先輩と校舎を出た。
その間、フライト兄弟に「やったな!」とばかりに親指を立てられた。
本人達が俺達のやり取りをどう見ていたのか分からないけど、俺は二人に軽く手を振った。
応援してくれてありがとうの気持ちを籠めて。
なんかこのやり取りが女子くさいと思ったのはその直後のことだったけど。



