前略、肉食お嬢様―ヒロインな俺はお嬢様のカノジョ―



フライト兄弟の痛烈な裏切り発言からどうにかこうにか立ち直った俺は(二人がジュースを一本ずつ奢ってくれるって言ったからそれで許した)、どうやって先輩をデートに誘おうか悩んでいた。


まずは「一緒に帰りましょう」と話を切り出すところから事は始まるんだけど、先輩、ああ見えて多忙なんだ。


財閥の令嬢だからなのか習い事が多くて、学校が終わるとさっさ帰って行くことが多い。

車で送り迎えされているみたいで、時間になると正門に高級車が停まっていたりする。


しかも何台か高級車が正門に停まっていたりもするんだ。

あれが邪魔だと思うのは俺だけじゃないだろう。


まあ、エレガンス学院は元々お金持ち校だからな。


先輩の他にも令息令嬢がいるんだ。

皆、習い事だったり何だったりで時間が押しているんだと思う。


大変だよな、お金持ちの娘・息子ってのも。



ってなわけで俺は先輩を本当に誘って良いのか迷っていた。



うーん、俺の悪い癖だよな。

行動もせずにあれこれ考えちまうの。


でも、やっぱり考えちまうんだよな。


向こうが迷惑に思うんじゃないかとか、今日は忙しいんじゃないかとか。


今日じゃなくても良いんだけど……もしも先輩が喜んでくれるなら……な?


俺だって学校生活以外で先輩と過ごしてみたいと思うし。

駄目元で誘ってみよう。


決心した俺は放課後、先輩がいるであろう二年F組に足を運ぶことにした。


しかし、それには及ばなかった。

俺が教室を出る前に鈴理先輩の方が早くSHRが終わったらしく、教室に足を運んできてくれたんだ。


手招きしてくる先輩の元に急いで駆け寄ると、先輩は俺を廊下に連れ出し、笑顔で俺の目の前に一冊のノートを取り出した。


何の変哲も無いただのノート。

裏面だけど鼻高々にノートを見せ付けてくれる。


どうしたんだろう、先輩。そんなに目を輝かせて。


首を傾げる俺に対し、彼女は大興奮で語り始めた。若干早口なりながら。


「空、これを見ろ! 早苗と百合子があたしのために小説を書いてくれたんだ!」

「川島先輩と宇津木先輩が?」


「攻め女の小説がないと嘆いていたあたしのために、二人が書いてくれたんだ! どちらも読書をする方ではないのだが、無論、話を書く方でもないのだが、読んでみると素晴らしい世界が詰まっていた! 嗚呼、これこそあたしの求めている攻め女小説!」