「ユウヤはユウヤですよ。お父さんと同じじゃありません。
こんなかわいいお嬢さんと訪ねて来てくれたじゃない。
日本人なのね。懐かしいわ。」



「彼女はひかるっていうんだ。優しくてとてもすばらしい女性だよ。
だから恋敵も多くてね。母さんに僕のよさを言ってもらわないと、負けそうなんだ。」



ユウヤはいたずらっぽく母親に笑って話していました。
ユウヤの母はひかるの様子から、何かを察しているようで帰りにひかるにお礼をいいました。


「ひかるさん、息子を連れてきていただいてありがとうね。
結婚してあげてとはいえないけれど、いいお付き合いしてやってください。
お願いします。」


何度も頭を下げる母親にひかるは手を握って言いました。


「これからはユウヤさんと会いたいときに会えますね。
私こそ、こんな感動的な場面に居させてもらってうれしいです。
ありがとうございました。」



ユウヤの母の店を後にして、ひかるはユウヤの住まいのあるホテル内の部屋にもどってきました。



「はい、コーヒー・・・。結果的にひかるをだましてしまってごめんね。」


「え、何が?」


「田舎へ行くっていって母親のところへ付いてきてもらった・・・。」



「それならそうと言ってくれてても、私はついていったわよ。
でも、よかったね。優しいお母さんで。」



「ああ。想像どおり・・・っていうか小さい頃の記憶のままだった。
きっとショックだったのは、あの優しい母さんが突然僕たちを置いて消えてしまったことにあったんだと思う。

虐待とかされて捨てられてたのなら、恐怖はあったと思うけど、さびしさと悲しさは大きくなかったと思うから・・・。」



「さびしさと悲しさ・・・。((千裕様と同じなのかもしれない。お母さんに会いたくても会えない気持ち。))」



ひかるがそんなことを考えていると、ユウヤはひかるのすぐ前に立っていました。


((しまった、ユウヤが近い・・・))