ひかるの休日にユウヤはノルマンディー地方の村々を案内しました。

最初から旅行目的だったら、あたりまえのはずの観光スポットなのでしょうが、最初から修行と勉強漬けのひかるにとっては、絵本の世界に来たようではしゃいでしまいました。


「みんな絵画の世界みたいな、きれいな村ですね。
お花もいっぱいで、すごくきれい。」


ひかるが大喜びしている一方で、ユウヤはあるお店の前に車を止めると何か考え込んでいるようでした。



「このお店って・・・雑貨やさん?」



「この店に私の母がいる・・・。」



「ユウヤのお母さんが?・・・会いに来たのね。」



「うん。子どもの頃に捨てられたと聞かされたまま、消息は追っていたのに、どうしても会う気持ちになれなかったんだ。
会って、ひどく拒絶されたらどうしよう。
母の夫になっている人に殴られるんじゃないかとか・・・。

でも4カ月ほど前に夫を亡くしたらしくて、その情報を知ったらどうしても会っておかなくてはいけないような気がして。

なぜ僕たち兄弟を捨てて出て行ったのか・・・。それだけは聞きたくて。
それを聞かないと、前に進めない気がするんだ。」



「大丈夫だよ。私も付いていくから会いに行きましょう。
ほんとにひどい人だったら、あきらめがつくでしょう?
私も父に三崎へ売られたと思ったときがあったわ。
でも、実際は違ってた・・・。

とにかくわからないまま進めないのはユウヤのためには絶対ならないからね。
あ、いきなりがつらかったら、私が先にお店に行ってこようか?」


「いや、いっしょに行く。」



2人は雑貨屋の中に入っていくと、応対するのに奥から出てきた女性は日本人女性でした。


「お母さん・・・。」


「ユウヤ、ユウヤ来てくれたのね・・・。」



ユウヤの母親は小さな頃に別れたとは思えないほど、ユウヤをはっきりと呼び、涙を流していました。

すぐに店を閉店にしてしまい、ユウヤが小さな頃好きだったという手作りのクレープを出しました。