千裕はひかるの腕をひっぱって正面から抱きしめていいました。


「なぜ謝る?謝るのは俺の方・・・。もっと早く気付いて守らなきゃいけなかったのに、恐ろしいめに合わせてしまった。ごめん・・・セルジュから連絡をもらってたし、発信器で場所は特定できていたんだ。

けど、警察の手配と事情聴取とかで動けなくて。
犯罪を犯した連中は、全員逮捕できたよ。」


「結衣さんは?結衣さんは日本にずっといたんでしょう?」


「結衣さんは、被害者だったんだ。伊波は血のつながらない妹を使って、三崎に送り込むことを考えていたらしい。
薬物中毒にして、お腹の子を千裕の子だとずっと教え込んでいたんだ。
結衣さんの思い出の中で、三崎の息子のイメージはずっと淳裕だったというわけさ。

昔、通学途中に気分が悪くなった結衣さんを淳裕が助けて、病院まで付き添ったことがあったんだと。」


「お腹の子は結局・・・誰の」


「伊波の子らしい。結衣さんはそこの記憶を自分で封印したのか、薬のせいでわからないままだったのか不明なんだそうだ。」



「ひどい・・・。お金のためにそんなことまで・・・」


「悪徳商売している気持ちがこちら側になくても、人の恨みはどこからわいてくるか、わからないものだね。
俺も、今回のことで、自分の立場が嫌になったよ。
大切な人を守れないなんて・・・。
正直いって、ひかるは俺といたら不幸なんじゃないかって・・・。」



「ちゃんと守ってくれたじゃないですか。
守ってくれるために、発信機だってこっそり私につけてるんでしょう?」


「そうだけど・・・そんなことする男はやっぱり本来おかしいよな。」


「じゃあ、1つだけ教えて。もし、セルジュさんが私を救いにきてくれてなかったら千裕様はどうしてましたか?」



「ひかるのところへ殴りこんでたに決まってるだろ。
俺だったら、相手を撃ち殺してたかもしれない・・・。」



「ほんとに?」


「いや、撃ち殺すつもりで突っ込んで、ひかるといっしょに一目散に逃げてたな。」


「もぅ・・・うふっふふ。」


「やっと笑ってくれた。」