裕文は千裕に電話をいれると、ひかるに日本へもどると告げました。

「会社倒産だ・・・。もどったら有名人になると思うけど、嫌わないでくれる?」


「がんばる人を嫌ったりしません。」


「じゃ。千裕なるべく早く返すようにするから・・・。」




裕文は工房から走り去って行きました。


「実業家ってのは大変だね。千裕はそんな戦場には向かない男だと思うけどな。」

ヴァレリーは裕文が出て行くのを見て、事務所に来ていました。


「私も向いてないと思うんですけど・・・でも、仕事中の千裕様は私の知らない人でもありますから・・・。」






ひかるはその日はそのまま家へもどり、琴美に現在の会社の事情を調べてもらうことにしました。


「私も休日にしてはおかしいと思ったのよ。
裕文はほんとにあきらめが早すぎるわ。
それにしても、千裕も自分だけで背負わないで、私にも相談してくれてもいいのにねぇ。

男のメンツがど~のとか言うのかしらねぇ。」


琴美は裕文の会社に多額の援助をし、会社の代表者を裕樹に変更するように連絡をしていました。

ひかるが心配していた取引先の女性については、千裕がきっぱりと断りの返事をして、それでもかなり女性は認めようとしませんでしたが、婚約指輪と携帯電話に入っているひかるの写真を見せて何とか納得させたとのことでした。


「ああ・・・でも、こんなことまだありそうな気がする・・・。はぁ。




とりあえずは一安心のはずだったのですが、夜になってひかるの携帯電話に女性の声で電話がかかってきました。


「あなたがひかるさん?三崎君の婚約者か何だか知らないけど、私の親友の結衣(ゆい)が三崎君の子どもを身ごもっちゃったんだから手をひいてくださる?」


「えっ?あなたはどなたですか?」


「私は伊波結衣の親友で中山って言います。千裕君が婚約者がいるからって言ったんで電話番号を教えてもらって直接かけました。
こそこそが大っきらいなので、正々堂々言ってるんです。
とにかく、婚約解消してくださいね。お願いします。」


ガチャ。