翌朝、ひかるは千裕からの電話で目を覚ましました。
「おはよ。寝坊してないか?」
「あぅ・・・おはよう・・・ございまふ。」
「今起きたのか?かけて正解だったな。あのさ、そっちにもどるのもうちょっとかかりそうだ。」
「昨日、裕文様がきて、聞きました。なんか経理が大変そうって・・・。」
「あいつ、そっちに来てるの?」
「え?千裕様がここに来るように言ったんじゃ・・・」
「違う!あいつのせいで、こっちはなぁ・・・あ、ひかるに怒っても仕方ないんだけどさ、裕文に会ったら日本にもどるように説得してくれないかな。
でも、そっちに逃げたら無理か・・・。くっ」
「何があったんですか?・・・もしもし、千裕様?・・あれ?」
『ちひろぉ~~~~今日はどこを案内してくださるのかしらん・・・。
今日は寝るまでつきあってもらいますわよん。うふふ・・・。』
「うわっ、あの・・・」
電話の向こうに女の声と慌てる千裕の声がしました。
「もしもし!今の誰ですか? 千裕様は何やってるんですか?
もしもし?」
「・・・・・ごめん、また電話するから。」
「あ、千裕さまっ!・・・・・切れた。」
ひかるはとにかく事情を裕文に聞こうと、母屋の方へ行きました。
「えっ!裕文様がいない?どういうこと・・・。
裕文様が何かやらかして、千裕様に何か危機的なことが起こってるような気がするんだけど・・・。
でも・・・仕事上のトラブルがどうして女の人と・・・?
あっ、いけない。遅刻しちゃう!!」
ひかるは大慌てで工房へと出かけて行きました。