「いや、君には些細なことかもしれないけど、僕は千裕さんの気持ちになれるなぁ。
背中を押してほしかった。
その女の子を思うと悲しくなかった。
いつかはその子と会うためにがんばろう、で実績残してがんばって会えたわけだ。

とてもいい話だよ。
不釣り合いだなんて言って、ほんとに申し訳ない。
そんなものはとっくに超越してた間柄だった。

あ、原稿できあがったら発売前に必ず、お見せしますから。」



「よろしくお願いします。」



ひかると千裕はその後、写真と原稿の確認をして隅田に了承の返事をしました。

そして、隅田が書いた2人の記事が掲載された雑誌が発売されると、千裕の絵がついた商品はますます売り上げが上がり、別の出版社やテレビの地方局なども取材依頼がきました。

しかし、2人はすべて依頼は断り、話は琴美の会社を通してもらうことにしました。



「はあ~~~メディアってすごいな。」


「もう、最初電話が鳴りまくってどうなるかと思っちゃいました。」


「ひかるが隅田さんに協力してしまうからだぞ。」


「だって・・・私が話さなくても、批判受けても記事にしたいっていうんだもん。
事実と違ってることを書かれるくらいなら事実を説明した方がいいと思って。
あとで、そういうのがプロだってわかったんだけど・・・。ごめんなさい。」


「結局、2人とも写真載ってしまったから、外も歩けないようになったな。」


「歩けないのは千裕様だけだと思うけど・・・。
私は普通に歩いてるから・・・絵の女の子のモデルですよ~ってだけだからねぇ。」



「げっ。困るなぁ・・・アトリエに行ったら、取材陣もいるし、知らない絵描きがいっぱい増えてるしで、当分は琴美さんの屋敷の部屋貸してもらって描く・・・しか・・・。」


千裕はひかると話している途中で、床にひざをつくと頭を手でおさえて倒れました。


「千裕さまっ!」



救急車で病院へ運ばれた千裕でしたが、2日目になっても意識がもどりません。
検査結果では異常が見受けられない状況でしたが、眠り続けているのでした。


隅田とセルジュも千裕の様子を見に来ましたが、眠ったままの千裕を見て、暗い表情になりました。