占い師さんのいる扉には、何も書かれていなかった。おそらく隠れ家的な場所なのかもしれない。

 室内へ入ると、あまりにも殺風景だった。蛍光灯がチカチカして薄暗く、一番奥にオフィスでよく見る机があり、そこに怪しげな人物が静かに座っている。

 あれが占い師さんかしら。

 その人物は黒い布をすっぽり被っているので、女性だろうということしか分からない。


「こんにちは。今日は友人を連れてきたので見て貰えますか?」


 百合子が明るくそう云うと、占い師は黙って頷いた。

 占い師の前には、安物のパイプ椅子が二つ置いてあり、百合子に促がされ、私もそこに腰掛けた。


「お名前は?」


 ひどくしわがれた声で占い師が私に問う。

 目は布で半分隠れているけれど、私を見ているのかもしれない。

 名前を答えると、占い師は何やら呪文のようなものを唱え出し、身体を左右に揺らし始めた。

 何か胡散臭いなぁ。