だって、口を交わしたことなんて学園生活が始まって以来初めてのことで、今の今まで一回も目すら合わず、今日初めて口を交わし、目も合ったぐらいなのだ。
そんな接点がクラスメートっていうだけで大勢いる他の人達と何ら変わりなかったあたしを何故、道留君が彼女に選んだのかが分からない。
やっぱり、他の付き合った男達と一緒で、顔とか身体が目当てなのだろうか。
…………って!
『そんなこと有り得ないもんっ!』
うん、道留君に限ってそんなこと絶対に絶対にぜーったいに有り得ない。
根拠なんかないけれど、そこに絶対的な自信は溢れてて。
それに、あたしが道留君を信じると自分で決めて彼女になったんだから、そんな有り得ないことで早々に道留君を疑ってしまえば道留君に対してかなり失礼だ。
少しでも道留君を疑ってしまったっていうことに自己嫌悪に陥り、ドアの向こう側に居る道留君に『ごめんなさい…』聞こえないのは分かっているけど声に出して謝って。
ドアノブから手を離し、踵を返そうとドアを背にして何気なく顔を上げた瞬間。
目の前の光景――…てか人物を瞳に映してコンマ1秒。
逃げる戦術を身に付けた忍者が酷く羨ましく思えた。
「よぉ。堂々とサボりですか?可鈴ちゃん」
ひいぃいぃ!!


